02

 『誰ですか。何のようですか』そう返信したものの返事はなく、俺は結局昼休みにその呼び出しに応じることにした。さすがに待たせっぱなしにするわけにも行くまい。相手がリンチ目的なら無視すれば逆上するだろうし、……考えたくないが、告白場合、こんな俺みたいな男のために待ちぼうけなんてかわいそすぎる。
 薄情な鈴木は、「面白そうだったら呼べよ」なんて言って付いてこなかった。くそ、あいつ後で弁当のおかずひったくてやる。そう思いながら中館の階段を登る。
 中館二階には職員室があって、階段の先の三階は自習室や図書館がある。この時間帯は誰も利用者がいなくてひっそりとしている。もちろん廊下の電気もついていないから薄暗く、リノリウムの床と石の壁で冷やされた空気は肌寒い。中館と、北館の一階(三年の教室がある)の喧騒はココには届いてこない。
 そして階段を上りきり、そこにあった姿に俺は思わず硬直してしてしまった。
 廊下の壁に背を預けた、でかい男。ワックスで整えた髪はつややかに黒く、耳にはいくつも連なったピアスが痛々しい。
 男が俺の足音に振り返り、手にしていた携帯を閉じる。俺にメールを送ったところだったんだろうか。ちょうどポケットがバイブレーションで震えたが、出る気にはなれなかった。 
「お前が、城田?」
 近づいてくるその男。呼び出しておいて、こっちの顔知らんのかあんた。とは言えなかった。

……うわー。やばい、これ

 喧嘩なら俺にも分がある、なんておこがましいにもほどがあった。

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