不意打ち(我愛羅)



「風影さま、おやつですよ」

「ああ」

「あまり働きすぎると頭おかしくなりますよ」

「お前のように働きすぎないのもどうかと思う」


ふふ、と柔らかな笑みを執務に我愛羅は取りかかる。我愛羅は風影になってから忙しい日々が続いている。任務に判を押したり任務の仕分けもそうだしあんまり構ってはくれない。仕事もそれだけとは言わないがやはりせかせかして忙しそうだ。


「我愛羅のこと風影って言うのも飽きちゃった」

「…言うと思った」

「む…」


我愛羅が私に対する気持ちは幼なじみだからだろうか。小さい頃からいじめられる我愛羅を助けたり、いじめっ子を逆にいじめたり(主に私が)してきて我愛羅は私に感謝してもしきれないほど感謝していると言ってくれる。まぁ小さい頃はいじめられて悲しそうな顔をしていた我愛羅が可愛いかったのもあるが一番は好きだったからだろうか。いつから恋心が芽生えたかあまり定かではないが、時折見せる嬉しそうな顔や微笑みに今でもたまにノックアウトされてしまう。惚れた弱みってやつですかと心の中で呟き「週間!砂隠れ」を手に取り目玉の記事をパラパラと読んでいく。


「え」


あるページで私の手が止まる。風影さま逢い引き!?と大きくかかれた一面には我愛羅としらない女性が立っていた。我愛羅だってもう一人前の男だ。私が居なくてももう大丈夫ってことだよ。私なんかもう必要ないってことだよ。わかるでしょ。自分にいくら言い聞かせても手が震え思考もままならない。涙なんて出てこず、自然と寂しい感情が込み上げてくる。それに気付く前に身体は勝手に動いていた


「私帰る」

「…なぜだ?」

「………邪魔しちゃわるいと思って」

「なんのこ……まさかあの記事を見たのか?」


私の手に持つ雑誌を見て我愛羅がそう聞いてくる。見たのかじゃないよ。見たからこうなってるんだよ。我愛羅が離れて行っちゃうんだよ。いつもそばにいた我愛羅が遠くなっちゃうんだよ。涙が溢れているのに今更気がつき急いで部屋から出ようとしたのを我愛羅から引き止められる形となった。


「なぜ泣いている」

「がっ、あらが…離れちゃう」

「うん」

「遠くにいって、も、う昔みたいにっ、話せないのかなぁ」

「…馬鹿だな」

「馬鹿でいいもん…」

「あの記事の女は女装したカンクロウが俺を驚かそうとしたときのものだ」

「……………………え?」

「まぁいわゆるドッキリだ」

「え?は?バカなの?私、え?」

「予想以上に想ってくれていたのがわかった」


ぎゅーと我愛羅に抱きしめられ、ハメられたと今さら気付く。我愛羅なら、そう普段の我愛羅なら私が傷付かないよう見えない場所に隠してくれているはずだ。まさか我愛羅にハメられるとは


「我愛羅め…」

「可愛らしいな、お前は」

「我愛羅のばか…」

「そういうとこ含め好きだ」

「っ……!」


彼女に不意打ちを。



(後でカンクロウしばく)
(八つ当たりじゃん!)



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