▼ 04
「ほら、名前。抱いて見てごらんなさい‥あなたの弟よ」
「…ちっちゃい。」
イタチ兄に支えられながら、あたしの弟を優しく抱けば思ったよりも重たくて驚いた。これが、命の重さなんだ。
しわの残る肌、赤み掛かった体、小さな手足、こんなにも小さいのにあたしたちと同じように呼吸をして生を受けて、…精一杯生きている。
「……さすけ。」
「あら、名前名前決めたの?…サスケ、いい名前ね」
「ああ、‥うちはサスケ。いい名前だ」
思わず口走ってしまった名前に動揺したけれど、母やイタチ兄はもちろん父までもが絶賛してくれた。この瞬間から、サスケはサスケ≠ノなったのだ。
「サスケ、今日からあたしがおねえちゃんなんだよ」
「オレは兄さんだな」
「イタチお兄ちゃんは、前からお兄ちゃんじゃん」
「あらあら、名前お姉ちゃんそんな顔をしていたらサスケが怖がってしまうわよ」
母にそう言われて慌ててサスケを見るが、スヤスヤと気持ちよさそうに眠っていて思わず安堵のため息をついた。よかった、見られてないようだ。
「イタチお兄ちゃんも、あたしが生まれた時嬉しいと思った?」
「当たり前さ。大切な妹が出来たんだ嬉しいに決まっているだろう?」
あたしが生まれて、生きていて嬉しいと思ってくれる人が居るってこんなにも幸せで、満たされるなんて知らなかった。
「あたしね、お父さんがお父さんで、お母さんがお母さんで、お兄ちゃんがイタチお兄ちゃんで、弟がサスケで幸せだよ!」
この時の父の嬉しそうに上がった口角も、母の柔らかい笑みも、イタチ兄の優しい手も、腕に感じる命の重さも、きっとあたしは忘れない。
120529
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