処刑台の主役 | ナノ


▼ 02

「名前ったらお転婆ね」

「あう‥ぅうあ‥っ!」


自由の効かない体と喋ることが出来なくて歯がゆい日々を過ごしている。

そう、驚くことにあたしはどうやら輪廻転生というものをしてしまったらしい。とどのつまり、あたしはあの日彼女に殺されてしまったのだ。その事に気が付いた時に酷く安心したのは記憶に新しい。
新しく生を受けて数カ月、元々自我があるせいか目まぐるしいほどの成長ぶりを見せるあたしに両親は驚くと同時に(主に父は)自慢げだった。


「ただいま。名前、いい子にしてたか?」

「あーうあ」


頭をやさしく撫でてくれる目の前の少年は、あたしのお兄さんらしい。普段もそうだけれど彼はとにかくあたしに甘い。もう、それはそれはチョコレートや生クリームよりも甘い。とにかく甘い。
シスコンとは彼の為にあるようなものだ。
と言っても悪い気はしないのだけれど、いかせん彼は俗に言うイケメン≠ネので照れてしまわないように必死になるあたしの気持ちになってくれ。


「イタチったら本当に名前が好きねぇ」

「オレは兄さんだからね!ほら名前おいで!」

「あぅぁ」


あたしを犬か何かと勘違いしていそうなイタチ兄を見れば素敵な笑顔で両手を広げて待っている。覚束ない足取りでフラフラと近づいていけば柔らかな抱擁が待っていた。


「名前はオレが守るからね!」


――だってオレはお兄さんだから!


新しい世界は、幸せと笑顔で溢れている。


120528

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