ポインセチアは甘くない | ナノ


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第一ビルに向かって外とは思えないモールの熱い空気に酔いながらも端の方に抜け出したオレは携帯で電話を掛ける。
冷やかしの客はいるもののそれ以外は逆流もなく通りやすい店と波の隙間を避け足を速める。
「……出ない、な」
何もなければそれでいい、デートの邪魔をするなと怒るだろうがナマエなら許してくれるはずだ。
だが水月の言葉を聞いたときどうにも胸騒ぎがした。時間がたつにつれ大きくなっていく不安と焦燥。昔サスケが好色の男に誘拐された時と同じだ。
しかもよくよく思い出してみればあの第一ビルはかなりでかいところだが今の時間まで食事するような場所はない、ゲームセンターはナマエも高沢も好まなかったはずだ。
3度目のかけ直しをするオレに鬼鮫の「おやイタチさん」とのんきな声が降ってきた。
「どうしたんです、小南さんと一緒じゃなかったですか?」
「そんなことは今どうでもいいんだ。鬼鮫、デイダラの番号は解るか」
いつもなら質問には答えるイタチが隅に置いたことで鬼鮫はなにかを察し、戸惑いつつもデイダラを呼び出しイタチに携帯を渡す。
電話の先で、買った荷物をこれからサークルに届けようとバイクに積んでいたデイダラが苛立ちながらそれを取った。

「んだよ鬼鮫、こっちは今バイクから溢れる荷物をどうしようかと」
「デイダラ、すまないが顔が広いお前に頼みがある。木の葉駅の第一ビル周辺で貸切も受け付けている学生がパーティを出来るような場所はないか?」
「……何でイタチ、いや別にいいけど何でそんなこと知りたいんだ、うん?」
電話越しでも焦っているのがわかる程早口で捲し立てるイタチに、会えば突っかかっていくデイダラも流石に声色を落とした。
育ちのいいイタチが乱交の言葉をどのように言い直そうかと口ごもると電話の先から少し問答するような声が聞こえ、デイダラ特有の口癖が聞こえなくなった。
「またナマエ関連だな。んでその周辺でお前の焦り様だと今日の乱交パーティにでも巻きこまれてんのか?」
「サソリ、まさか貴様」
「おいおい、俺が関わってるって言いたいのか?」
そりゃねぇだろ、大体マワした女なんて汚くて触れねえとサソリが目を細める。
デイダラが隣で旦那はそもそも数多過ぎて持て余してるもんなと羨望の視線を送ってきたので鼻で笑ってやった。

「まあお前が口ごもるから大体察したぜ。ロッカー代諸々お前持ちならオレらも行ってやる」
「……頼む」
だとよデイダラ。サソリが受話器から遠くなりパシリと肉の音が小さく響いた後、再び持ち主が「旦那の話で大体察したぜ」と通話越しに頷く。
「んで今どこにいんだよ」
「モール側の駅前」
「了解。荷物置いて改札あたりで待ってろ。すぐバイクで向かう、うん」
電話特有の切断音をさせた携帯を鬼鮫に返す。サソリの声は電話越しでも通る為すぐそばにいた鬼鮫にも聞こえていたようだ。
荷物置いてきますと行動の早い友人は少し先にあるロッカーにその巨体を向けた。


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