宝石とさよなら | ナノ


▼ 89



いまだに岩の下を見ることができないでいた。
砂は血を吸い取り、乾燥した気候はそのものを風化させ砂にする。
約束を守れずオレは暴れた。真っ二つにされたキンコウが合格だと言い息絶えた。誰もそれが普通であるかのように泣くこともわめくことも罵倒することもなく、ただ静かな戦いだった。
ようやく周りを殲滅し、首謀者の男と対峙する。
表は上忍だったが暗部として名の通っていたヤツが肉塊になる予定の最後の一人となっていた。

「ヤリスマル、俺が嫌いなら俺に刃を向けるべきだったな」
「そういうわけにはいかないんですよ、化け物飼い」

勝てないからとか言うわけじゃなく、任務ですからと潰され骨の刺さっているだろう肺で息をする。
ああ、父さまなのか……。
また俺から奪うのか……、いや。

「俺が奪ったのか」
ゆっくりと閉じていく掌に呼応しゴキャリと音を鳴らした砂の塊が用は済んだだろうとでも言う様に地面へと落ちる。
何も変わらなかったのだ。


あれから8年もたってしまった。
ナマエの居なくなった世界でもがく様に他者を蹴散らし、心配してくれる姉と兄も避けた。
のちにナルトというオレと同じ人柱力と出会い、丸くなったと評価した2人と上忍になったバキたちに風影に推薦され就任するも、父の後釜という位に内心は苛立っていた。
ナマエを暗殺する命令を出した父さまと同じことをしているのかと自傷気味に笑った。
ただそんな感傷に浸れるような暇はほぼなく、大蛇丸に混乱させられ崩壊一歩手前だったそれを立て直すことに尽力することにした。

今は同盟国同士の今後の国防強化の話で木の葉に来ていた。怠かったのだがテマリに喝を入れられ護衛と共に木の葉に向かう。
緋宝丸の世話は任せておくじゃんとカンクロウが受けてくれた、兄の器用なところは認めているからきっと大丈夫だろう。テマリだと枯らしかねん。
ナルトはまだ修行から帰ってこないらしい。
途中暇を見つけ散策に繰り出せば笑いあえる仲になったリーと出会い、茶を共にしたりもしたがやはり胸の内に空いた穴を埋めることはなかった。そんな時だった。

「風影様、5代目火影様から伝言です」
宿の女将が伝えてくれたことに驚き瓢箪を肩から落としてしまった。女将がそれに反応し呼び止める前にオレは既に宿の屋根を蹴って病院へと向かったのだった。


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