宝石とさよなら | ナノ


▼ 81



天井が白い。空の色は橙かったはずなのに……ああそうかこれが死なのか。
死してなお意識があるとか思ってもなかった、だだっぴろくて白いだけの世界に一人とか気が狂うんじゃないだろうか。
思わずため息をついた。
「先生、ナマエさんが目を覚ましました」

段々と覚醒してきた頭に響く女の人の声。
あれ一人じゃなかった。良かったおしゃべり位は出来るかと起き上がって声を掛けようとしたら、反対側から押さえつけられた。
「おう、おはようさん」
男はなんだか見覚えがある。何だろう、すごく懐かしい……。


「あれ、部長じゃないですか」
「お、ようやく頭も戻ってきたな」
心配したんだぞなんて笑う懐かしい顔に空笑いを返す。喉が渇いていた。
「ほら」
お前の嫌いなブランドのコーヒーだけど、そう言って鞄から出した缶を放り投げてくる部長。
慌てて掴むが本気で苦手な種類の奴だったので「帰れよ」なんて乱暴に投げ返した。
おうおう、元気あるみたいだな!とからから笑う部長は探りを入れていただけらしい。ちゃんと鞄からミネラルウォーターを取り出し渡してくれた。
ご丁寧に蓋を開けてから渡してくれた部長にありがとうございますと礼を言い淵に口を付ける。

「いやあしかし参ったよ」
3日も無断欠勤するから心配になって大家に鍵開けてもらったらお前床で突っ伏してんだもん、間違えて警察よんじゃったよ。
死体監察医の人が瞳孔見て死んでないって言うもんだからあわてて救急車手配したりさぁ。
「ちょっと待って警察とか聞いてない」
「死体に了承とるわけないだろ、死んでなかったけど」
ひょうひょうと言っているが、確実に起きたら警察の人と話さなくちゃいけないフラグ立ってますよねそれ……。
なんてことしてくれたんだと椅子に座る部長の肩を叩いた。


_



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -