宝石とさよなら | ナノ


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「……、……」
「ようシュデン、……?おお珍しいな、チクマが黙り込んじまってるなんて」
「マタンか。先ほどナマエから我愛羅様に通信先を変えてからこれなんだ。反応すらせんおかげで仕事をしないで済んでいる」

うんざりと皮肉たっぷりにそういってのけたシュデンがチクマの眼前で手を振るが忠犬の言う通り反応はない。
それどころかまるで彼女の周りだけ時間が止まったかのように手元の紙に穴が開くほど鉛筆の先を押し付けている。
息を吸うことすら忘れているのか、だんだんと青白くなっていく顔に気づき、慌ててマタンが肩に手を置き揺さぶる。
漸く我に返り息を吸い込んだチクマが噎せ、机の上に額を突っ伏しながらも別の方向へとチャクラを飛ばす。
片手でポーチから取り出したケースを振りたくり、がりりと手元に用意していたチャクラ増幅丸を零れ落ちた分……綿密に言えば八粒かみ砕いた。
チャクラ貯蔵量は並みであるチクマにとってその丸薬はもはや常備薬ともいえる代物だったが、薬学専門ではないマタンでも流石に一度にその量は摂取しすぎだと止めに入ったがそれを胃へと落とすと静かにしててくれとこちらを見ることなくマタン達側の腕をあげ、目前に手のひらを見せぴたりと止める。
普段狂人のごとく笑ってばかりのチクマのあまりの気迫に大人しく引き下がったマタンの元にシュデンが近寄る。
ダメだっただろ?と言いたげな顔をするシュデンを視界に入れ、今初めて彼女がそこにいたのだと気づいたかのように「シュデン!」と名を呼んだ。

「戦争だ」
「は、はぁ?それをしないために我愛羅様が鉄の国まで行ったんじゃないのか?」
「それは追々話すからまず我愛羅様に通信繋いで私の代わりに影たちの話のメモをとってて」
「月の桂を連れてきた方がチャクラ温存できるだろう?まだ顔青いし無理はよくないとおもうが……。呼んでくるぞ?」
「うちのはほぼ他国の諜報活動中だ。非番のやつらには今から私が頼みごとをするから空いていない」
マタンはこれから我愛羅様が帰ってくるまでの一週間に備蓄を倍以上にするよう手配してくれ。
捲し立てる様に言い切った後、チクマはナマエが付けた猫バア手製のカプセルへ波長を合わせた。



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