宝石とさよなら | ナノ


▼ 506



ナマエが別の任務を言い渡されていることなんてつゆも知らず、我愛羅達は対峙する奇妙な仮面の男に思考をかき乱されていた。

「無限月読……、地上に存在するすべての人間に幻術をかけコントロールする」
「地上を征服するなら十尾一匹で事足りるだろう?なぜ幻術をかける」
いったい何が目的なんだと男の本心を探ろうと全員が注目する中さして緊張もせずに高い位置から身振り手振りを添え大講演会を始めた男にこの場にいる人間たちの視線が一段階鋭くなっていた。
考え方が狂人だと各々が判断する。仮面の下で理想を思い描いている男の顔が恍惚に歪んでいるのが容易に理解できた。

「なるほど、暁のことが中途半端にバレていたのも頷ける賢さだ。若さからくる柔軟な思考のおかげか?」
くつくつと仮面の下で不気味に茶化し笑う男に取り合うことなく我愛羅は男の目的を見定めようと翡翠色の視線を投げ続ける。
反発だけをする影達の中で最年少が故の愚直な姿勢に気分がよくなったのか、教えてやろうと笑いを止め向き直った。

「忍の世界に希望などないことをお前たちは頭で理解しているはずだ、口にしないだけでな」
わだかまりも何もなく、世界はオレと一つになる。すべての人間が理想通りの世界をオレが作り出してやる。
これこそが真の平和な世界だと宣う男に次々と影たちが噛み付く中、我愛羅だけが黙り込んでいた。
幻の中の世界などと表の自分は口に仕掛けたものの、深層心理でその世界を望んでいた自分もいたことを思い出したのだ。
甘言だとはわかっている。だが“ナマエが元の世界に帰ることなく自分とともにいてくれたら”なんて常日頃から考えていることが現実になればどうだ?
地位も家族も何もかもを捨て、自分と共に生きることを選んでくれたらそれはどんなに幸せなことなのだろう。

この場にいる人間の中で最年少の風の国の影に手ごたえを感じ、男は仮面の下で目を細め見澄ます。
確か、コレはうちはサスケと同年代だった。うちはの生き残りであるアレが理想を求めこちら側についたのを見ていた男は少しばかり期待していたが、我愛羅はそれを首を振って振り払うと風影としての自分を張り付けた。
「……ああ、実に残念だ」
ぼそりと呟いた男の発言は仮面のせいでくぐもりだれの耳にも届くことはなかった。

「同意を得られなかったのは残念だが仕方がない。良いだろう、ここに第四次忍界大戦の宣戦を布告する」
力でしか平和を維持できない世界など……。
消えた男の最後の発言に気を取られ、誰もがチャクラを追うことを忘れてしまっていた。


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