宝石とさよなら | ナノ


▼ 498



胸のパーツを外套の下で開け、内にこもった熱を逃がすサソリの視線がナマエに突き刺さる。
待つのは嫌いだと口にはされなかったもののその目に顕著に出ていて、急かされるような感覚を覚えたナマエはぽつりぽつりと話し出した。

向こうの世界では会社にも入ったしそれなりにいい地位にも付け足し仕事もできた、だがこっちに来てからは周りに負担をかけてばかりで成果の一つもない。
出来そうだと手を伸ばしたものも、途中で力が足りずに何一つとして救えなかった。あの場にいた侍たちにだってそうだ、私は見捨ててしまった。
長い年月をかけて皆は術を使えるように努力するのに、ぽっとでの私はこんなに便利な身体をもっておきながら、何一つ役に立てていない。使いこなせていない。
我愛羅君の安否が気になって飛び出したのに、うちはサスケの攻撃一つで危機に陥ったし逆に心配させてしまった。
チクマちゃんの変わりを務める任務だって中途半端に終わってしまった。
この後我愛羅君たちの方で直接話し合いが始まるだろうし結局何の役にも立てなかった。
力量不足もいいところだ。
ノルマも何も達成できない自分のことはもう見捨ててほしいと言いかけたナマエを遮るように、近くに座っていたサソリが盛大な溜息をついてその声をかき消した。

我愛羅に言わせようと思っていたが……一つ、思考がまとまらず同じようなことを繰り返してる子供で馬鹿な弟子にありがたい言葉をくれてやる。
そう前置きし、ナマエの視線が自分に移ったことを確認すると、「身の程をわきまえろ」と吐き捨てた。

人には適材適所っつーもんがある。手を伸ばせる範囲が決まっているんだ。
傀儡使いなんてそれが顕著に出るだろ、お前は今まで砂で一番数の多い傀儡師どもを見てきて何もわからなかったのか?
暗殺奇襲は得意とする傀儡だが、正面からデカブツに正攻法で攻められるとなす術がない。オレだろうがそれは例外じゃないんだ。
できるようになるためには多大な時間がかかる、すぐに何でもできると思うな。お前の一番の目的は元の世界に帰ることじゃなかったのか?
願望がまだ変わってねぇならせいぜい自分の身を守ることを念頭に置いておくべきだなとナマエの額を強めに小突き目を細めた。



_



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -