宝石とさよなら | ナノ


▼ 496



ナマエにとっては、こういったことは遠い世界の話だったのだろう。
この世界に生まれた自分たちとは違い彼女は戦闘面での、自分が出来ること出来ないこと、優先すべきことが判断できないのだ。
忍は戦いの中でその経験を積んでいき、下忍を一年もやっていればそれに基づいた判断を下せるようになる。
だが彼女はこの年になってもアカデミー生と同じだった。
決して頭が悪いわけではないのに、と彼女のちぐはぐさに肝を冷やす。平気で戦場に飛び込むし、その楽天的な思考と沁みついた社畜根性が身を滅ぼしかねない。
あと何度これを繰り返せば、生き延びるための判断が付くようになるのだろう。
我愛羅はふぅと溜息ともつかないそれを小さく吐き出すと、ナマエの頬に手をやった。やっぱり熱いじゃないか。

「……だめだ。体温が上がりすぎている。戻って冷やすんだ」
「でもキンコウちゃんから……」
「頼むから駄々をこねないでくれ。アレはもう手の届かないところへ行ってしまったんだ。チクマにはオレが命じたと言えばいい」
「駄々なんかじゃ…」
うちはサスケはきっと、ナルトやサクラの言うことにすら耳を傾けることはない。
ナマエでは止めることも倒すこともできないし、先ほどのような術が使えるならばサソリとの相性も悪い。
そもそもチクマから頼まれたこともサスケが現れたことで意味がなくなってしまった。この後会談が再開するならその場で話し合いを始めるだろう。
木の葉の代理はどうかわからないが、少なくとも雲隠れと霧隠れは前向きに検討していると感じた。忍三国と鉄が手を組むとなれば、岩も動くかもしれない。
会談では、影以外の発言は意味を持たない。これ以上ナマエたちにできることはないだろうし、それならば安全なところで待っていてもらった方が……。

考えを巡らせていた我愛羅の背中に先ほどまで藁くずだの砂だのをかぶって若干苛立っていたサソリが「オイ」と短く声をかけてきた。
「……オレの給与はどうなる?」
「貴方には“護衛のみ”を頼んでいるはずだ。ナマエの任務がどうなろうが給与は払う」
「なるほど、じゃあ部屋まで連れて帰ってやる」

ああ、よろしく頼む。そう返そうとした我愛羅の耳元に口をやり、「お役御免だと口にしろ」と姉と兄に見えない角度から肘を入れる。
テメェがはっきり否定しねぇからこの馬鹿はいつまでたっても何かできるのでは?と勘違いしたままなんだ。
やんわり言っても判らないのには気づいてるんだろ?ナマエを否定できないなら引き際を見極めさせる教育でもするんだなとキツめに忠告した。
「オラ、テメェは部屋で報告入れろ」
そう口にしつま先で軽く蹴とばすと我愛羅の腕から外れたナマエを回収し、引きずるようにして会談の方角とは反対方向に進んでいくサソリが兄弟たちへひらひらと後ろ手に手を振った。
通路の奥に消えていった二人を確認したダルイが「随分と暴力的な護衛ッスね」とぼそりと突っ込んだ。


_



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -