宝石とさよなら | ナノ


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「貴方はいつもそうだ」
どうして危険に突っ込んでいくんだと憤り片腕をひらりと翻すと雷影の足を守り代わりに炎の針山を受けた砂がぎゅうと拳大まで圧縮する。
酸素を遮断しさらさらと床にこぼれ落ちていく砂にまとわりついていた黒炎も無機物には勝てず、まるで最初から存在していなかったかのように影を消していた。
助かった、礼を言う。ナマエをヒルコで押さえつけているサソリを見、そう声をかけた我愛羅にひらりと追い払う様に手を翻し先にそいつを片付けたほうがいいんじゃねえかとアイコンタクトを送る。
ちらりと現状を確認した我愛羅は「テマリ、カンクロウ」と兄と姉を呼び、返事とともに扇子を広げたテマリが「侍共、しっかり捕まってな」と挑戦的な笑顔を浮かべ景気良く叫んだ。
久しく本気を出せていなかったテマリが思い切り相棒を振るうと瓦礫と化した柱の破片が吹き飛ぶほどの鎌いたちが黒炎に蒸し焼きにされかけている侍目がけて起こり、その鉄鎧と布地に切れ込みを入れる。
着脱の難しい作りの鉄鎧にねっとりとまとわりついていた黒炎があまりの突風に一瞬消えかけたところをすかさずカンクロウがチャクラ糸を伸ばし取り除いた。
再び燃え出した鉄の塊を端に放るとぷちりと糸を切り焼けただれた侍の身体を近くにいた侍へと放った。
「す、すまない風影殿」
「忍のゴタゴタに貴方達を巻き込んですまない、さがっていろ」
ついでに通路の負傷者も早く医療所へ運んでやれと暴風のような忍の戦いに手出しできずにいた増援達へと声をかけた。

話がしたいと間に入ってきた我愛羅に鼻を鳴らし不満を口にした雷影だったが左腕を見、治療が終わるまでだと腕を手刀で切り落としながら我愛羅の数歩後ろに下がる。
歩くのすらまだおぼつかないシーがダルイの肩を借りて飛び降り駆けつけ傷口にチャクラを流し込む。
荒々しい応急手当をする雲隠れにナマエがチラリとサソリを一瞥するが、ヒルコでさらにのしかかりながら会議の結果がわからないのにむやみやたらと助けようとすんなと腕をひねりあげた。
ナマエの上に座り込んだサソリがヒルコを巻物にしまい込み階下に視線を投げる。
柔軟の苦手なナマエが痛いと小さく悲鳴をあげるがあいつ……と思わず零したサソリの声に睨むのをやめ同じように目線をしたへ投げた。

「泣いてる……?」
ナマエは知らない。我愛羅がうちはサスケの赤い…紅い、双眸に、自分の姿を映し見ていたことを。
全てを無くし、ただひたすら目を瞑って生きているサスケに言葉を詰まらせた我愛羅をカンクロウが叱咤する。
黙ったままテマリが扇子を開き構える。やってきた静寂に我愛羅の独白がやけに響いた。

「……今のお前は、オレがあの時のまま成長した姿なんだな」
瓢箪から溢れ噴出し轟々とその存在を見る者すべてに主張する砂の大海の中心にいる我愛羅が、ナマエにはひたすら静かで光の差し込まない海の底に佇んでいるように見えた。



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