宝石とさよなら | ナノ


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「おま、ざっけんな!こっちまで麻痺させてんじゃねえよ」
「そこに程よく目に見えてぶっといチャクラ糸があったもので……、あと術の大きさは細かく変えられないのはいつものことだし仕方ないでしょ!」
突っ込むサソリに半ば叫ぶように返したナマエの両手から出てきた雷がチャクラ糸を焼き切って、水月はその場に倒れこむと液状化して距離をとった。
チャクラの放出量が大きく、ナマエでは威力と方向をコントロールもできず長続きさせられない雷ではその場しのぎにしかならないようである。
忍はともかく侍が周りにいる為一番範囲の狭い物を使ったのだが、敵味方関係なく脳から神経へ送られる電波ををジャミングしたそれはサソリの核と手足の末端までの…神経と筋肉の役割を担っている細く伸ばしたチャクラ糸も同じように焼き切った。
崩れ落ちる手前、その天才的な腕で一瞬にして繋ぎなおし落ちかけた膝を立たせたサソリがナマエのわき腹に蹴りを入れる。ぐえと蛙がつぶれたような声を出したナマエが腹を抑えて恨みがましい視線を向けたが、それも壁の方でモスキート音が聞こえだし、体勢を立て直しながら顔を向けた。

「死ねェーーッ!」
巨大な包丁を持った男が本来の狙いだったらしいもう一つの鉈のような巨大な刃物を持った男に走っていったのとほぼ同時に、荒れたエントランスに男の声が響いたと思うと目を開けていられないほどの光量と熱風に曝され眼球を守る為に両腕を盾にする。
じり、と髪の毛や肌が焼けるような感覚を覚え後ずされば、足元の砂を踏む音に反応したのかサソリが目元に影を作りながらヒルコの尾で盾を作ってくれる。
甘えその巨大な尾の付近に寄れば追撃するかのような殺気が背後の壁の上から送られ、ドサリと雲隠れの額宛をした男の一人がその場に倒れた。
ようやく光が消え、倒れた一人の傍に駆け寄る。出血はしていないが何らかの狂気に曝されたらしい彼が起き上がる気配すら見せずがくがくと震えているのを目ざとく見つけた男が次のターゲットを彼に決めたと判断したからである。

「シー何寝てやがる、立てって!」
先ほどの包丁男の大ぶりな乱舞を鉈と両腕で受け流しながら倒れた仲間を心配して呼びかけるが、呼ばれた彼はやはり反応を示すことはない。
侍たちは自分たちの仲間をすでに回収し避難させている為心配はしなくていいが、雲隠れは誰一人として仲間の元に駆け寄ることができないようだった。
敵を追ってきたらしい雷影達を残し我愛羅たちの元にいるであろうサソリの元同僚をとらえる為その場を離れてもよかったが、彼が誰にも助けられることなく逃げられないなら一番近くにいる自分たちが助けるしかない。
狂気一色に囚われている彼の上体を起こし脇に両腕を通すと「おっさん」と後ろで崩れてきた柱をヒルコで破壊していたサソリに叫んだ。
自分でどうにかしろよと文句を垂れ流しつつもナマエから出ている目視できるほどの太いチャクラ糸と己から出した糸を何本か絡め、手繰り寄せてくれたのだった。


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