宝石とさよなら | ナノ


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「……これが雪か」
「思ってたより寒ィじゃん……」
安全面を第一に考慮しそれなりにゆったりと幾日かかけて進んで行った一行はようやく砂とは寒暖の差が激しすぎる鉄の国に入った。
普段から他国より内部の対立が激しい風の国、大名から贅沢がどうのこうのと文句を言われないように旅館は最低限しかとらないようにしていたため手近にあった小さめの寺院で五人はまた一夜を明かした。
二日目からは流石に悪いと提案通り交代しつつ回していた見張りだったがやはりサソリは寝ることなく、バトンを渡すものの四人の話し相手をしてやる程度の面倒見の良さを見せていた。
明け方起こされたナマエがテマリから交代し、着替えを終え無人寺に配備されていた囲炉裏を少し弄ると道中こっそり買っておいた粒あんと白玉を取り出し仕込みのメンテナンスをするサソリの左に座った。
しんしんと、澄んだ空気が時たま隙間から入り込み、雪が降っていることを確信したナマエがサソリと適当な話をしながら鍋をかき混ぜる。
よく眠っている兄弟たちに微笑み「カンクロウ君辺りが確実に騒ぐと思う」と戸口に目をやり荷物の底に沈んでいた一本の巻物をポーチの中に移動しておいた。


ナマエが温め作っていた汁粉を摂った三人はその厳しさに真顔になり一度外と内を隔てている引き戸を閉めた。
夜の間に雪が降ってきていたらしく、記憶にある昨晩の形相とえらく違っている。
話に聞いていただけのまだ見ぬ雪にいささか興奮していたように見えた彼らの様子もやはり考えていた通りである。
どうやら三人とも寒さに抵抗を持っていられるほどの年齢ではなかったようだ、皆一様にはしゃぐ前に意気消沈してしまっていた。
まあ砂の寒さと違い水分を含んだこれは雪国生まれでもきっと顔をしかめてしまうだろう。何しろ一瞬目に入ってきた外は豪雪地帯並みの積もり方をしていた。

吹き込んできた刺すような冷たさが足元から這い上がり、それだけで草履から露出した肌が赤く染まりはじめている。
ぶるりと身体を震わせるテマリとカンクロウに苦笑いを浮かべたナマエがポーチから巻物を取り出した。
いまいちコツが掴めないのと、やっぱり直前で怖くなってしまう為に、犬歯で指に傷をつけられない私はクナイを取り出し一線を引くと、今しがた紐解いたばかりの巻物を開きそこに指を押し付ける。
口寄せの要領で取り出した上着をそれぞれ渡しながら「絶対その装備じゃ風邪ひくと思ってたんだよ」と笑い自分にはこちらの世界に戻ってきたときに着ていたコートを取り出した。

足元はすぐに動けるようにしておかなくてはいけないからとチクマから聞いていたため上着だけだが経験したことのない痛さを伴う冷たさは少しは緩和できたようで、我愛羅は分厚い生地を撫でてはこんな布の服は砂では売られていないがいったいどこで?と疑問を提唱した。
「どこにでも物好きな行商人はいるものよ」
チクマちゃんの伝手で買いに行っといたんだよと得意げに語るナマエと自身の上着を見た我愛羅が色がお揃いだと砂の鎧の下で密かに頬を染めた。



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