宝石とさよなら | ナノ


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隣室がうるさくなりマタンの訪れを察したナマエがもう一つ湯飲みを取り出しお茶を手に帰ってくると、見るからに不機嫌そうなサソリと苦笑気味のマタンが迎えてくれた。
サソリも年の功にはかなわないんだなぁなどと本人が聞いていたら淹れてきたばかりの茶をぶっかけられそうなことを考えながらすみません待たせしましたと謝る。
直接その手から受け取った茶を一息で飲み干すと、サソリに投げつけられたカルテを顔の隣で揺らしながらチクマは元気?と尋ねてきた。
「え、いやいつもどおりでしたが……」
「ああそう、じゃあもう平気かな?」

意味深な受け答えをするマタンに怪訝な顔を向けたナマエが年相応に薄っすら皺のできた男の顔を探るように覗き込む。
それに困ったように唸っていたマタンがチクマは肩をぱっくりやられていたんだと答えを提示した。

「君も使わず、さらには細胞の前借りが嫌だとかで一般的な医療しか施していなくてね」
君たち情報部は足はそれほど使うことはないが上半身は嫌というほど使うだろう?だから治るのも遅いしおとなしく言うことを聞いてくれたらよかったんだがと肩を竦めたマタンがナマエの異変に気付く。
目を見開き「えっ」だの「あっ?」などと繰り返すナマエにああもしかしなくても気づいてなかったんだと頬をかいたマタンをサソリが肯定する。

「毒抜きくらいはしてやったんだろ?なら大丈夫じゃねぇの」
「まあそれはそうなんだけど……。ああそういえばサソリ、その件はありがとう。いい薬だったよ」
「当然だろ、契約を解除しない限り老衰でも死なせねぇよ。アレの死後も首輪つけられたままなんてたまったもんじゃねぇし」

サソリは知っていたのに何も言わなかったのとマタンにやっていた視線をそちらに変えにらみつけるがどこ吹く風である。
高値で赤砂特性の毒消し売ってやるぜ?と商談を始めた二人の間に目を細めたナマエが「いいからさっさと検診終わらせてください」と割り込んだ。


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