宝石とさよなら | ナノ


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恐る恐る布を除けば最後に見たあの姿と寸分の狂いもないチヨ様がそこにいて、ぽろりと自然に涙をこぼした私はその肌を撫でる。
垂れた肌の質量も背丈も何もかもが最期の瞬間の思い出のまま、天才傀儡造形師が記憶のみで作り上げた動かない師匠の容れ物に思わず生きてるかと思ったと声にすれば、人形だよと粉と煤だらけのサソリが答えた。
表皮を模りスキンを被せるようにしているが、傀儡と同じように作った為可動も可能であるが何度も言う様に関節部分のスキンの耐久がない。
試作品だし所有者予定の人物が傀儡師になるわけじゃないし置物としてならこれくらいだろうと数日前に妥協し完成させたが、次から作るモノはより工夫し強固なものにしなければならない。
完成後も自身で組み立てた傀儡を持ってきては意見をもらおうと貪欲に居座るカンクロウを使いテストを重ねて今朝方ようやくましなものが出来たのである。
サソリ自体は寝不足にならないまでも、工房にこもりっきりで心身ともに疲労を感じているらしくだらりと四肢を投げだしたまま続けた。

「目は入れてねぇ、どうせテメェにやるモンだから選ばせてやろうと思ってよ」
流石にババアの重さは表現できなかったが普通の傀儡のように仕込みも収納できると説明し、「で、目玉は何を使う?」と問う。
「サソリ、回収したあなたの両親は誰が持ってるの?」
何を言い出すんだこいつはと怪訝そうな顔で「あ?」と短く発するも自分が持っていると答えれば、ならサソリが持っててと目尻を拭い、傀儡をそっとサソリに向けた。
「欲しいんじゃなかったのかよ」
「……家族なら、一緒にいなくちゃ」
「ただの人形だぞ?」
「それでも……っ」
チヨ様はサソリが帰ってくるのを……また一緒に暮らせる日をずっと待ってたんだ。
人形だろうがこんな精巧なもの受け取れないと押しつけるように返したナマエが約束通り私はサソリにちゃんと知識と石英を出すから傍に置いといてあげてほしいと震える声を出した。
お前が欲しいって言うから作ってやったんだがなと寝ころんだまま頭を掻いたサソリがまあ取引続行なら別にかまわねえがと眉根をあげた。


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