宝石とさよなら | ナノ


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「今からこれを精留させるがここから先てめぇが出来ることは何もないぜ」
用無しどころか自分が使える複合術で出来た副産物の説明をしてもちんぷんかんぷんだったお前は邪魔だとばかりに暇をもらった私は我愛羅君と両手いっぱいの宝石を抱え離れへと帰る為真夜中の里を歩く。
我愛羅君もカンクロウ君と同じく実物を見て傀儡制作の工程に興味が沸いたらしい。ソファーに残骸というには些か高級な石を並べ終え、私がまだ動けなそうだと確認するとその間に次の工程に入っていたらしい傀儡師二人の元へと離れて行く。
サソリの説明で理解できていたようでたまに頷きながら説明を聞いていたらしいが、身体を起こせるようになった瞬間工房から追い出された私と共に帰ることにしてくれらようだ。
気になっているようだがおっさんは二度説明したくないと言うだろうから残るらしいカンクロウ君に後で聞くのだろう。
そう言えば羅砂さんも比重が…なんて言っていた気がする。いやちょっと記憶があいまいだからマタンさんだったかもしれないしヤリスマルさんだったかもしれないけど。確かにストッパー役の説明を受けた時に誰かに比重の重い砂金で砂を抑えていたとかなんとか聞いた覚えがある。
大体だ、ごくごく一般的なレールの上をのんびり進んできた私に金と砂の重さなんてわかるわけがない。右から左に流れて行く言葉を適当な頷きで誤魔化したものだ。
しかし砂隠れは中々に理系が多いらしい。いいや、そもそもある程度のレベルに行った傀儡師が皆毒調合出来る時点で理系の国だという事に気付くべきだったか。

不純物のくっついた六角柱の束を丁寧に布の上に並べ埃が被らないよう食器棚にしまう。
どうせ売るならなるべく良いものを持ってくる人間だと卸し業者には思われておいた方が良いはずだ。金より安いだろうが貧乏だといざというときに忍を動かしづらいだろうし。
あと“芸術”の為にはいくらでも浪費してやると豪語しやがったサソリを連れて帰った手前、いつも心配するなと言いつつ資金繰りに苦心惨憺するチクマちゃんたちの役に立ちたい。
頭はもうどうにもならなそうだし、身体も忍となんて比べるまでもなく底辺だしで消去法で金銭面になっただけだが。
「ちょうど情報部隊にいるんだし一応チクマちゃんに相談入れてから業者さんを探してみるよ」
サソリに暇を出されたから数日は暇だろうしね。我愛羅君と違ってこっちはやることも趣味もないからちょうどいいわといつものように端により布団を持ち上げて迎えれば、いそいそと入ってきた我愛羅君の顔は不満げで、どうしたのかと首をかしげる。
せっかくそれなりに元の距離に戻ったはずなのに視線を合わせようとしない我愛羅君が横になりながらシーツをずらし近づき、私の袖を少々引いた。
「……暇なら紙じゃなくてこっちを構ってほしい」
最近全然一緒に入れない、さみしいとぽつぽつ口から零れる言葉に、「やだ我愛羅君あざとい!」なんて叫びながら昼一緒に食べようかと約束するしかなかった。不可抗力である。


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