宝石とさよなら | ナノ


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粉々とまでは行かないものの損傷がひどく修復が難しい左腕の、特に関節部分を見、サソリは工房に帰って来てから三度目の溜息をついた。
この部分を作ったのが約一週間前である。7日……、604,800秒でこの見るも無残な姿になったわけである。
自分の身体だからこそ我が儘を言ってあの女に“良いもの”を頼んだのだが、やはり正規に流通している物じゃだめだと悟った。
「賞金首……狩るしかねえか」
砂へのスパイ活動は一任されていたからしばらくはばれないだろうが時間が経てばいつか必ず角都の耳に入るだろう。自分の獲物に対しては滅法に煩かった。
アレに知られれば脅威として暁から狙われるのは必至である。いくら里が囲ってくれるとはいえ本気でかかられたら現状風影一強の弱体化している砂では勝てるわけがない。
組織の強さなんてものは自分が一番知っていた。リーダーであるペインの狙いであった一尾を回収し終わっているからノーマークなのだろうが再び目を付けられれば二の舞なのである。
そのためには1対1ならタメを張れる自分が早急に強くなる必要性がある。そして自分の強さには傀儡と莫大な資金が必要で金を効率よく稼ぐためには強い賞金首を……。

「あーくそ、ループじゃねえか!部屋の金は死んだもんだと思われてるだろうから角都にとられてるだろうし」
傀儡になってまでなお金に縛られるとは思わなかったと零し、コレクションの中からサイズの合いそうな左腕を片っ端から試し肩に嵌めていく。
経年劣化で関節がかたくなっているものもあり、特に指が動かなければ今から始めるメンテナンスの作業に支障をきたす。後程こんなめんどくさいことでいちいち悩まなくてよくするためにも妥協などできなかった。
吟味しこれなら十分だと己の経験に従い判断したサソリは風影により予選会場へ引きずられていった金の無心先が来るまでの間、大まかな金額位は出しておこうと山になっている修理すべき傀儡たちの山から一体引きずり出した。
ただ予選が早く終わったのか、はたまた吟味する時間が長かったのが悪いのか10分後には工房へ家出して来ていた女が勝手知ったる田舎の家のごとく入ってきたため中断することになる。


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