宝石とさよなら | ナノ


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何ともまあうちの我愛羅君は器用な子である。執念深く完璧を追い妥協しないところは砂隠れ特有の性質なのかもしれない。
小さい頃の分身体は確かに我愛羅君の姿をしていたし抱きしめた時の堅さや表情も本物に近く細かく変わってはいたもののよくよく見れば砂だとわかるものだった。
だが目の前のこれには舌を巻いた。毎日砂の鎧をまとわせている我愛羅君は試行錯誤を繰り返したらしい。
多分カンクロウ君を借り出したんだろうが風影の羽織や笠を外したそれは色まで本物と見まごうほどに再現していたのである。
思わずおおう……と声を出してしまえば抱きついたままの我愛羅君は得意げに砂絵用の砂を使ったと言い出した。
木の葉でイルカ先生がたまに自慢していたナルト君の影分身のように諜報には適さない砂分身の短所をいたずらっ子のような発想で克服してしまったのであった。
触ってみてくれと……無表情だがこの反応を待ち望んでいる目で見つめられれば手を伸ばさないわけにはいかない。
さらりと撫ぜるも砂特有の引っ掛かり等皆無で、風呂上りの我愛羅君と変わらないちょっとかさついた感覚が指に残る。思わずつつく様に押せば人のような弾力まで帰ってきた。
「肌触りはテマリが担当した。どうだ?」
「いやぁ、すごいですね……」
姉弟の集大成に対しこの月並みの感想であるが当の本人はさして気にした様子はない。むしろさらに得意げに頬を摺り寄せどうだと言わんばかりの表情である。
思わず敬語になってしまった私が窓から入ってくる風に揺れる赤く染まった砂をもしゃりと押さえれば毛先はふよふよと圧力に反発するように浮いた。どこまで表現すれば気が済むのか。完璧主義の気があるさそりやカンクロウ君達傀儡師だって鬘を使うのに……。
このすべてを砂一本でやろうとするところ、頼らないところは術者そっくりそのままである。

私の手に頭を摺り寄せるようにしながら溶けていった砂分身我愛羅君から笠を拾うと自分の頭に乗せ羽織りにも袖を通した。
「本当はいっぱい見せたい術があったんだが……」と尻すぼみに濁す我愛羅君。
確かに忙しかったしいろいろあったからね、それどころじゃなかった。術を解くのはまだまだ先になりそうだしそれもいいだろう。
頑張るところが違うだなんて野暮なことは言わず、リー君達とはまた別ベクトルの努力の結晶を「順番に見せてもらおうかな」と口にすれば、嬉しそうに笑い返してくれた。



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