宝石とさよなら | ナノ


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「馬鹿ナマエ」
漸く咳込みも落ち着いてきたナマエは自身の名前を呼ぶ声で漸く我愛羅だという事に気づいたらしく、気まずそうに「我愛羅君……」と呟いた。
それの返事代わりにと回されていた腕の力が増し三度目の「ばか」を零し、続けざまに「隠し事して、勝手に術をかけてごめんなさい」と返ってきた。
「だからもう知らないところで消えようとしないで……」
死にかけたのはナマエの方だというのに怖い夢を見た子供のように泣きじゃくる我愛羅へ、毒霧を直で浴び痺れる腕をどうにか回し、助けてくれたお礼とあの場では頭に血が上ってしまった事を詫び背中をぽんと一度だけ叩いた。

蚯蚓に真下から強襲された時に散らばった荷物を確認するため痺れたナマエを砂の上に寝かしつつ地へ飛び降りればざくざくと砂を踏み鳴らし左肩が全壊しているサソリが近寄ってきた。
半分以上我愛羅が最初に潰した蚯蚓に持って行かれたらしく、千切られた鞄は真っ二つになり忍具やらが刺さる様に四方へ散らばっている。
幸いだったのはチヨのコレクションが封じられている巻物はすべて無事だったことだろう。
サソリが胸につないでいる第二軍達の巻物は見るも無残な状態になっていたが中身が無事なのだ、大した問題ではない。

「囮になってくれたらしいな、感謝している」
粘液と毒霧で触れたもんじゃない受験者の資料をサソリの仕込みで燃やした後、自分を入れた三人とコレクションを乗せて上空を飛んでいた我愛羅が隣で動くことが出来ないナマエを落ちないように支えるサソリに礼を言った。
ぶっきらぼうな物言いだったがその短い言葉に素直な気持ちも滲み出てるのが解り皮肉を返そうとしていたサソリは一旦閉口し、応……と答える。
まあ半分以上が自分がそばに居られなかったのに四六時中一緒に居やがってと言う嫉妬であふれかえっていたが。
「眼鏡女の差し金なのはわかるが風影がこんな軽く里を抜け出していいのかよ」
毒霧が体を回り切ったのか口を動かすことも出来なくなったナマエをごく自然な動作で自分に凭れかけさせつつ純粋な興味で聞いたサソリからナマエを奪い、腕を脇の下に通し奪い取る我愛羅がチクマと砂分身がいるから心配しなくていいと牽制する。
さっきまでのそれなりに素直な態度は何処に放り投げてきたんだと舌打ちしたサソリは「飛ぶのに集中できねぇだろ?」とまだ年上の余裕をどうにか維持する。
その素体は持っててやるから渡せとばかりに手を出したサソリから避けようと狭い砂の塊の上で体をひねり逃げる我愛羅にいよいよ機嫌が降下し出したサソリは「年上のいう事は素直に聞いとけよガキ」と睨みを利かせたが兵器として生まれた時から育てられてきた我愛羅には効かず。
赤い髪の男たちの応酬に耐えられなくなったナマエが緩慢な動きで早くマタンさんのところに連れて行ってくれと頼み込んだのであった。


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