宝石とさよなら | ナノ


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「うーん…やっぱ見たことねぇわ」
連行されどうにか首が締まる前に態勢を立て直したヤックが自分の足で二人の後について行けば試験官と軽い立ち話を終え手に持ったファイルを確認しているナマエと噂の人物を見つけ、慌てて三人が壁の影に隠れた所で発したヤックの第一声がこれだった。
昨晩漸く到着したオレとマツリとイッテツを嵐のように出迎え、疲れてるだろうしとさっさと帰って行った彼女の横には何人かいたような気はしていた。
夜だったし疲れていたしで周りをちゃんと見ていなかったのだが、その中の一人があの男だったかもしれないがちゃんと認識したのはこれが初めてである。無論手合わせの時に見たことはない。

男は闇にまぎれやすいような暗色の顔布に同じような暗色の包帯で目以外を覆い、砂塵避けの外套まで羽織っていて裾から覗く足首や手首からしか体系を窺う事が出来ない。
闇色の顔布からはみ出した朱い瞳と同じ色の朱い髪を揺らしているが、それ以外の情報は読み取ることが出来なかった。
ナマエさんと同じように試験官の腕章を付けているのを見るに一応砂の忍らしい。
……もしかしたら最近になって砂に移住してきたナマエさんと同じなのかもしれないなとそれなりの予想を立てた時、マツリがあっと声をあげた。

「やばい、めっちゃ馴れ馴れしくない?肩に腕おいてる!」
「それくらい別にいいだろ!」
一挙一動に逐一反応を見せるチームメイトとその友人に思わず突っ込んだヤックが二人の襟首を猫のように掴み、部屋へ戻ろうと前を見た時ふと男と視線を交わしたような気がしてその鋭い眼光にぶるりと背を震わせたのだった。

オレ達に背中を見せている身体は一切動いていないのにどうして真後ろのオレと目があったのだろうか?
二人にお前らも見たかと聞こうとするも、襟首を掴まれたことによりアレから目を離してしまっている同期が解る訳もない。
顔布の中でぐりんと首だけを回転させたような……。
朝からホラーテイストな恐怖を抱いたヤックは力任せに二人を引きずりその場から逃走するしかなかった。


「ナマエ、やっぱりお前下忍共と絡み過ぎたな」
肩に腕を乗せていたサソリが耳に顔を近づけながらそうつぶやいたのでどういう事だと問うがそれに応えることはなかった。



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