宝石とさよなら | ナノ


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自分達が敬愛する風影様に一番近しい人間であるナマエの色恋の匂いを嗅ぎつけたサリとマツリは、受験生の中でそれなりに仲の良く、またチヨの元へ一番熱心に通っていた同郷出身のヤックを探し、明日の朝には元の無人宿へと戻るであろう塔を徘徊していた。
まあ娯楽施設があるわけでもなくめぼしい場所は食堂となっている自分たちが先ほどまでいた講堂くらいしかないので、部屋にいるだろうと踏み突撃する。
与えられた自室ではなかったが隣りの隣が騒がしかったため覗きこめば同期の男が集まって談笑しておりその輪の中にちゃんといたためそこまで歩かずに済んだ。
仲間たちと談笑しつつ暗器の手入れをしていたヤックを戸口から呼びつけると若干めんどくさそうな表情を浮かべながらもしぶしぶ簡易ベッドから足を降ろしマツリ達の元へとやってきた。

チヨの元へ通っていたという事はナマエと一番手合せした下忍なのだが、やはりそんな男は見なかったと答えたヤックに女子二人は色めきたった。
「じゃあ、じゃあ!やっぱりこっそり逢瀬してた恋人だよ!もうこれ決定でしょ」
「いや、マツリ流石にそれはないだろ、あの人はそういう人じゃない……と思う」
男の気なんてそれっぽっちもなかったしあの我愛羅様が許すと思えないんだけどと突っ込むヤックだが女は二人でも姦しかった。
そうに違いないと断言し騒ぎ出した同期の女二人に何でだと理由を聞き返した。
男女が並んで歩いてただけでカップル認定されるなら独身なんて言葉生まれねぇよと吐きだすもこの煩い同期達が自分の言葉をすべて聞く様な耳を持っているわけもなく、中途半端に前半の部分だけを抜き取り口を開いた。
「だって私達とナマエさんが話してた時に嫉妬してるかのようにムッとしながら裾引っ張って呼んだんだよ?」
「応援してくれてると言っても我愛羅様の事を考えるとやっぱりいつかは倒さなくちゃいけない壁だった人にそういう噂が微粒子レベルでもあったらもう裏を取るしかないよね?」
そして私たちはその恋を応援するしかないじゃない?ね?と交互に責められるような錯覚になりそうな言語の弾幕にヤックは恋する女怖すぎという感情しか抱けなかった。
あー、うん……まあ、頑張れよ。そう一言投げ、巻き込まれないうちにさっさと帰ろうと踵を返したヤックに二人は両肩を抑え制止をかける。
「まさか手伝わないとか言うんじゃないよね?」
「やっだー!ヤック君の空気詠み人知らずゥ!」
二人の顔に影が差しこんだのを見てなぜ部屋にいた時に逃げなかったのかと数分前の己を憎んだ。
中忍試験中にお前らの恋愛事情に付き合ってたら受かるもんも受かんねぇわ!と叫びたくともそのまま作戦会議だとばかりに襟首を掴まれ連行され、きゅうと締まった気道から言葉が発せられることはなかった。


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