宝石とさよなら | ナノ


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例え嫌われようとナマエが不自由してなければいいと我愛羅は心の中で呟き腕の中に顔を伏せて一拍置いたのち、そんなわけないだろうと自分の言葉に突っ込んだ。
ナマエは喧嘩をすると距離を置きたがる傾向があった。それは彼女にとってみればただ冷静になる時間が欲しいと言うだけの話だが我愛羅にとってはその時間が長引けば長引くほど落ち着いたままの自分を保つことが困難になる。
部下たちがぽろっと零さなければナマエだってここまでじゃなかったはずだと思う自分もいれば、ここまで隠しておいたせいで距離を置かれているのだと叱咤する自分もいる。
自分達が中忍試験をやった時とは違い、今回は受験者が少ないから初日である本日から二週間後に本戦となる。
終わったのちが風影の本番だった。宴会を開き各国の大名たちを接待をしながらいかに助成金をもぎ取れるかが我愛羅の手腕にかかっているがこんな状態じゃそれもうまくいくかわからなかった。
ナマエを塔に送るつもりだとチクマに相談され急ぎ贔屓店である数年ぶりに対面して頭を下げ回転草の店主を派遣させたがそれでナマエの態度が少し緩和してくれないだろうかなんて小狡いことを考えたりもした。
何にせよ今後一生このままの距離なのが一番堪えるし彼女が帰ってきたら話をしなければなるまい。

警備に出ているシュデンの代わりにお目付け役として頼まれたらしいチクマが暗部の報告書を無言で手渡してきたため
本日幾度目かの気合を入れそれに目を通しつつ、ふと気づいたことを口にしたのだった。

「サソリの監視は誰がついてるんだ?」
「先ほどボディガードの傀儡と共に塔に着いたとナマエから連絡受けました」
抜かりありませんと眼鏡のフレームを持ち上げレンズを光らせたチクマに我愛羅は椅子を倒し勢いよく立ちあがった。
窓から飛び出そうとする我愛羅の肩を掴むとチクマは呆れたとため息をつき、執務室へと引き戻す。
「まあ待ちなよ五代目。ナマエを殺せないようにいつもの奴をサソリにやったじゃないか」
「そうじゃない!」
「大丈夫だよ、あれは傀儡でナマエも大人だ。そんな関係になるわけがないだろう?」
そんなことよりも我愛羅はナマエに謝罪の言葉を考える方が先決だと思うと主張するチクマに倒した椅子を砂で立て元の位置に戻すとそこにすとんと腰を下ろして先ほどと全く同じ姿で机に突っ伏した。


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