宝石とさよなら | ナノ


▼ 359




「ネジ君ありがとう……」
ナマエと一緒にとぼとぼ歩いてきたネジ達二人は出迎えられ、ナマエは彼にお礼を零す。
気にするなと眉を下げたネジの白い目が優しくナマエを見つめていたが、女は視線を合わせずに病院の中にあるマタンの私室へといつもの様に足を進めて行った。
その背中が一層小さく見えて一声かけようか迷ったものの、伸ばしかけた手を引っ込め、出迎えてくれたテッカンという名の大男にナマエを渡し、頼んだ。そういう事は専門外だとばかりに苦い顔をされたが。
聞けば身近な人間の人死には初めてだという。チヨバア様の殉職が彼女に変化を与えることは確実だったがそれを克服するのはまた本人の仕事だとネジは考える。
自分達で手助けくらいはしてやるかと、父を取られて尖りきっていた自分が昔ナルトに助けられたのを思いだし、まずは班員のリーへと相談しようとあの特徴的な緑を探し始めた。


自分を助けてくれたというナマエの師匠への祈りを捧げた後、あの人を探そうと一歩進んだがいまだ硬直しているのか足が出ることなくつんのめって倒れてしまった為、探すこともできずにナルトに背負われ砂へと帰ってきてしまったが……。
大丈夫だというサクラとテンテンの言葉を信じてはいるものの、戦闘能力のほぼない彼女がいつもみたいに自己犠牲を発揮して死にかけている姿を想像してしまい、自分の目で確かめたくて病室の窓へと顔を寄せながら里の入り口へと我愛羅は目を凝らしていた。
意識はそれなりに覚醒しているが身体は疲れているらしい。守鶴はいないはずなのにいつもの睡眠サイクルで数十分ごとに寝ては覚めてを繰り返していた。
夜9時になってもナマエは帰ってこなくてそろそろ焦燥感が募りすぎて口が歪みだしていた我愛羅に先ほどうたた寝をしている間に帰ってきて今怪我を治していると病室に入ってきたチクマが報告してきた。
「救世主サマ達への接待もちゃんとやってますから五代目はどうぞ安心して寝ててください」
「怪我は、大丈夫なのか?」
「擦り傷程度だから安心して。まあ疲れてるっぽくてすぐに寝ちゃったわ。あと二、三日眠りこけてそうだよ」
ナマエは燃費が悪いねぇとけらけら笑うチクマに大けがをしてないならいいんだと膝に乗せた手元を見つめた。


「我愛羅様の様子は……」
「あー、数日絶対安静だけどいつも通りナマエの心配してたから大丈夫だと思う。問題は」
「ナマエ……か。しっかしチヨバア様の遺言だからって厄介なものも持って帰ってきたなぁアイツは……」
そもそもS級犯罪者を連れて帰るなんて前代未聞だぞと渋い顔をするバキの肩に腕を回したマタンがまあまあと宥める。

馴れ馴れしいマタンの態度にも慣れたものなのか、肩に回された手を無い物としつつアレは従順になったと思ったらすぐ手のひらを返してくるぞと警告する。
自分は反対だと、今からでも遅くはないから捨てるべきだと主張するバキにマタンとチクマは顔を見合わせいやな含みのある表情で一笑した。
「あれの誑し込みっぷりを侮ると痛い目を見るぞバキ」
「今は消沈してるけど、毒抜きも完全に終わって目覚めれば監視に就かせるよ。まあ見てなって」
そう言ったものの、仕事はするだろうがナマエが立ち直れるかの見込みはない。
立ち直ってくれなければそのうち我愛羅の方にも支障をきたすし早々に元に戻ってくれればいいのだが……。
我愛羅を取るかチヨを取るかという選択をしなければならないのだとひっそり感じていただろうナマエの顔は暗いままだった。
当分あれのケアに回ることになりそうだと眼鏡のレンズを拭うチクマにマタンもバキに見られないよう少しだけ後ろで空を見た。


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