宝石とさよなら | ナノ


▼ 357



皆がいた、だけどあの人はいなかった。
皆が笑っていた、だけどあの人は笑っていなかった。


我愛羅は目覚めた時最初にあの空間で結晶化してしまった愛しい人間の姿を確認しようとして額に手を当てながらぐるりと辺りを見回した。
最初にナルト、そしてテマリにカンクロウ。友人のリーやその師匠のガイに班員のテンテン……。
さらにその周りを囲む自分の部下達の姿を全員分確認して、その中に彼女がいないことに気が付いた。

「みんな、お前を助けるために走ってきたんだってばよ」
にひひといたずらっ子の様な笑みを向けるナルトの後、カンクロウがうちの弟は本当に世話がやけるじゃんと茶化す。
それを突っ込んだテマリが下っ端共と返せば口を尖らせた男二人に座り込んでいたカカシは何も言えないなと小さく笑った。
座っていては視界が狭いと立ち上がろうとし、硬直が解けていないのか震える膝から崩れ落ちかけた我愛羅をテマリが制した。
中忍試験の迫ったルーキー達が駆け寄ってきて甲斐甲斐しく大丈夫かと問う。
それに掠れた声で「ああ、心配をかけた。すまない」と答えていれば、どつかれたナルトにも心から礼を述べる。
友の為ならいつだって駈けつけてやるってばよとヒーロー発言をするナルトが何故か沈んだ顔をしていたサクラの腕に抱えられていたチヨバアを目にし、バアちゃんが助けてくれたんだと教えた。
ぐったりと、力なくそれなりに細く老いた足を投げ出しているチヨを疲れて寝てるけどと口にするナルトにカンクロウが違うと遮った。
「チヨバアは死んだ」

「あ、……え?」
まるで予想外だったらしいナルトがそんな間抜けな音を喉から発したがカンクロウは自分の大先輩であるチヨとその仲間の傀儡師たちの研究を簡潔に教える。
ナルト、我愛羅と……それからナマエを頼んだ。そう最後に告げたチヨの言葉を思いだし、誰かへ指定して届けようとしていないエビゾウの言葉を拾ったサクラが優しく頷いたのを我愛羅の隣で見ていたナルトは言葉なくそこにいた。
「我愛羅も、ナマエも……チヨバアの生み出した転生忍術を元に作られた化け物だからな」
オレも二人の事を化け物と呼びたくないけど、それ以外にあてられる言葉がないのだと苦笑する。まあ弟自体は化け物呼びを自分から使っている状態だから考慮も何もあったもんじゃないが。
「常日頃から、チヨバア様は里の事などどうでもいいと言っていたんだ。我愛羅の為に動くような人じゃなかった……」
お前は砂をどんどん変えてくれるなと我愛羅の頭に頬を寄せ、弟が生きてる事を堪能するテマリの眉は下がったままだったが、カカシの言葉にじいちゃんと同じだと零したナルトはあってまだ数日しかたってないチヨの言葉を思い出していた。

「チヨバア様に祈りを……」
ナルトの……友人の支えに助けられつつもどうにか立ち上がった我愛羅は自分を助けてくれた人をもう一度視界に入れ、瞼を閉じた。


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