宝石とさよなら | ナノ


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昼を過ぎたころ、そろそろチヨ様のところへ向かうかと業務を終わらせたナマエはマジュと別れ、先に部屋から出ようとした時だった。
第二会議室のドアがそろりと開き顔をのぞかせてきた子供がいた。
すみませんと吃りながら「この後お時間いいですか」と聞いた受験者に、座っていたマジュは待ってましたと机をたたき立ち上がった。
「それで、要件はどっちかな?」
あまりに勢いづき、まるでチクマのように身を乗り出したチクマ二号機に下忍はたじろぎつつ、要件を伝えた。

「まさかナマエさんにこんなコネがあったなんて……」
「いやぁコネじゃなくて情けかな」
ヤックの緊張した声色にははと苦笑いしながら頬をかいたナマエは共にチヨの元へと向かっていた。

砂の忍は一部の例外を除いてアカデミーなどを卒業しているため、大なり小なり個人の噂を耳にするだろうが私は完璧こちら側のイレギュラーである。
実力の解らない彼にホントは貴方よりも弱いよなんて頼られている身としていえるはずがなく、冷や汗を隠れて流していた。

流石に私以外の気配を察していたのかチヨ様が釣堀から出てきており、「早速か、今日は演習場……いや、遺跡へ行こう」と呟いた。
表向きは手合せだが、チクマちゃんから言われたサポートの案はプロレスで言うジョバーだ。
攻撃力はキンコウさんが表に出なければほぼ皆無だからと、負傷しないことを前提として組まれたプログラムである。つまり私は彼を殺さない為に攻撃を受けないよう必死に逃げ続けなければならないという事だった。
自分達はナマエを育成出来るほど暇を持て余しているわけではないから下忍との手合わせによりキンコウが出てこれない限界と、不足している経験値とスタミナ、それに忍に欠かせない足腰を作ってこいという事だった。
さらにサポート役としては実践訓練をすることで対戦相手である下忍は情報のない相手と戦える事、さらに打ち負かせられれば勢いも付くだろうと、そういう事らしい。

なかなかにめんどくさいことを提案し、チヨ様への手紙に書いてくれたチクマちゃんに少しの恨みをいだきつつ、また感謝もしながらスタートを切って駆けてきた彼を避けようと遺跡の壁へと身を隠し走る。
こちらも下忍の子と同じく実践訓練で常時経験値が貯まっていくからもしかしたら技が使えるようになるかもわからない。
ポーチの中に支給された道具だけじゃすぐに勝負がついてしまうから偶に術を試してみようと一人頷き、察知できない気配をどうにか捉えようと全身の毛を逆立て気を張った。


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