宝石とさよなら | ナノ


▼ 299



「チヨ様、これチクマからです」
そう言って昨晩渡されて手紙を届ければ非常にいやそうな顔が向けられた。
夜に言われたことと同じ内容だろう、中身を見てみたかったが流石にそれはよろしくないと我慢した為にどんな文章が書かれているのか想像もつかない。
彼女の文章なんてまだ書類形式のものしか見たことないからなおさらである。
まっすぐチヨ様を見つめる私の目と視線を交差させるとチヨ様が今度は呆れたように眉を片方上に持ち上げ訪ねてくる。

「本当にこれをやる気なのか?確かにワシは最後まで出来るようになるとまあ役に立てるんじゃないかとは言ったけどお前自身の実力から言うとこの期間じゃ無理じゃぞ?」
「必ず習得します。強くならないと支えられませんから」

その問いににこりと笑みを返すと一瞬呆気にとられた後白髪頭をガシガシとかきむしり砂の女は強情すぎると零した。
「姉ちゃんほど酷いのはそうそう見ないがな〜」
思わず突っ込んだ自身の言葉に漏れだした含み笑いが進化し爆笑を始めたエビゾウ様の顔面にチヨ様は釣竿を投げつけたのだった。


「いざ自分でやってみると怖いなこれ……」

半年以上前、自分の目の前で我愛羅君が両腕を振りながら披露した壁登りを成功させたナマエは釣り糸を垂らすチヨ様を呼ぶ。
朝に会議を終えて昼ごろからこちらへ向かいそこからずっと修行をしていたのだが、すでに夕暮れになってしまった橙色の空に染め上げられながら重力に従いばさりと落ちた髪の毛を掻きあげた。
感覚を掴んだりイメージをしてしまうのが常識で凝り固まってしまった脳では難しかっただけで、一度成功すればそこから安定するのは早かった。
子供だったら感覚という名のコツを覚えておくことが出来ずにいまだに壁をゆっくり歩くことすら出来なかったと思う。
驚いた顔をしているチヨ様が降りて来いと呼んだ為、少し小走りで壁を蹴った。
トッ…と小さく砂埃を立てて飛び下りると顎を擦るチヨ様がじろりとこちらへ目を向けた。

「お前は酷く甘すぎる思考をしていたからすぐに弱音を吐くかと思ったが、なるほどこれはこれで」
「流石にやらなくちゃいけない事はやりますよ…、それと傀儡も仕込み以外は動かせるようにはなりました」
教えを乞うからには基礎もできてないみっともない状態を少しは改善しないといけませんからとまだまだ課題の残る自身の身体を見つめながらナマエは答えた。
集中力が高いのか、与えた課題を思っていたより早く終わらせていくナマエ。
これは確かにチクマの手紙のように一ヶ月以内に習得しきれるのではないだろうかと大まかに算出し出したチヨは、今日はこれで休んでしっかりとチャクラを回復して来いと告げ、去っていったナマエの足音が聞こえなくなったころ弟へと顔を向けた。

「あやつは、あのキンコウに似てるな」
「似てないだろォ、キンコウはもっと血眼で可愛げがあった」
こっちは仕事だから熟していると言った感じだったぞと無関心を装いしっかりと観察していたエビゾウはそう答えたのだった。


_



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -