宝石とさよなら | ナノ


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「ナマエさん本当に大丈夫です?」
「やらなくちゃ強くなれないならやるしかないですよ」
心配しないでください、そう簡単には死ねない身体ですからと笑うナマエにオウメイはゴーグルの下で瞼を歪めた。
自分達の上司であるチクマは利益の有無で排他的な態度をとる傾向がある。
というよりは隊長の一族全体がそう言った考えを持っていた。
元々他里にいたらしい隊長たちだが何らかの事情で追い出され、受け入れてくれた砂に報いるため積極的に仕事人間になっている傾向がある。
自分達は実力をわかっているから適度な仕事で割り振り出来るが彼女は別である。
どうやら忍の中で働くには役立たずで穀潰しだと自信を評価しているらしいナマエはあまり断ることをしない、というよりオレ達は見たことがなかった。
隊長の気に中てられて無茶をしなければ良いのだけれどと隣を歩き自宅へと戻るナマエを見やる。
5代目様はこの人が好きで好きで仕方がないらしい。若干過保護な気があるから無茶をすればこちらに跳ね返ってくるだろう。
いっそのこと嫁にでもして手元の籠の中に大事に入れておけばいいのにと物騒なことを考えたが、流石に監禁は班員が可哀想だからと思考を中断した。

離れに呼び鈴などなくドアについている金具をコンと慣れない手つきで鳴らしたナマエに、普段なら駆け寄ってくるであろう5代目様は無言で顔をのぞかせた。
風影が狙われるかもしれないという話を聞いたからだろうか、ただいまーと両腕を伸ばし抱擁の態勢に入ったナマエを5代目様はちらりと見る。
今日は比較的仕事が少なかったし頑張って仕事を早く終わらせたのに、会議だとナマエを連れて行ったことに対して不貞腐れていたらしい。
……がその誘惑には勝てなかったようで、おずおずと身体をナマエに預けに行った。
傍から見ればバカップルのようなそれだが彼女は何らその気はないらしい、踵を返し一人静かにチクマの家へと戻る。
チクマ隊長たちは多分酒盛りを始めてるだろうからそれの片づけをしなくちゃならないなとぼやき、乾いた夜風に顔をしかめた。




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