宝石とさよなら | ナノ


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我愛羅君の態度が心残りではあるが一応許可は貰えた為、マジュちゃんの後を書類と傀儡をしまった鞄を持ってついて行く。
どうやらチクマちゃんの家に向かっているらしい。初めて監視目的ではなく他人の家に上がることに少々昂りを覚えていた私の前でマジュちゃんが「壁とかに触らないようにね」と注意を投げかけ砂隠れ特有の岩でできた建物の門をくぐった。
触ると何かあるのだろうかと疑問に思いつつ彼女の後を離れないようについて行く。至って普通の砂の建物だが段々彼女が住んでいるとは到底思えない様な配管だらけの場所へとやってきた。
サンダルのヒールで転びそうになりながらも進んでいれば、マジュちゃんが「風影様に草履買って貰ったら?」と肩を貸してくれた。確かにその方がよさそうだ。木の葉ではこんなひどい通路はなかったし砂でも見たことがなかったが、今後もここに来る時があるかもしれない。
徐々に狭くなっていく道の最奥……配管の束の裏にドアがありそこのチャイムを鳴らせば見知った顔が出迎えてくれた。

「やあ、何も触らなかったのかい?残念だね」
「一族で人のプライベート読み取ろうとするのやめてくださいよ」
「ウチは情報で生きて来てるんだから無理に決まってんでしょ」
部屋の奥にいるらしいオウメイの咎める声に笑いながら出迎えたチクマに足元が不安定だったナマエがなぜこんなところに?と問う。
「ん?ああ、ここうちの一族しか住んでないの」
情報屋として割と他国まで名が通っちゃってるから荒らされないように結界とか幻術とか許可貰って張らせてもらってるんだけどね、多分それに引っかかっただけだと笑った。
「え、じゃあ配管も?」
「ああ、今日は配管小屋なのかー」
一族内でローテーションしてるから今日の担当の人がそういう気分だったんだと思うよ、本来は普通の建物なんだけどね。
慣れないと迷子になったりもするから気を付けてね。まあそんなことはどうでもいいし…ささ、入った入った!と肩を掴み二人を招き入れた。

彼女の部屋は外とは比べ物にならないほど整理されていた。紙の束は多いがそれも棚にきちんと収まっている。
数枚机の上に乗っていたがどれも白紙できっと彼女の能力を使っている物なのだろうと考えた。
通されたリビングではオウメイが軽い夕食を作って待っていた。「マジュ、冷蔵庫から酒以外を」と彼が呼べばほいほいと慣れたように人の家の冷蔵庫を漁り始めた。
な、何かすることは……。ナマエがソファーで部下たちの背中を悠々と眺めていたチクマに声をかければナマエはこっちと指で呼ばれる。

「ナマエは今どこまで出来るようになった?」
「比較的動かせるようには……」
まだ仕込みとかの出しかたは解らないですけど…と答えれば上々だねとソファーに転がっていた上体を起こした。
「明日からチヨ様のところに通ってきなさい、今から話すけどちょっと厄介な話が舞い込んできたもんでね。急いでほしいのよ」
サポートの方も滞りなくやってほしいんだけど両立くらい出来るでしょと決めつけ暗にやれとくだした彼女にわかりましたと頷く。
ナマエの返事に良しと頷いた後、後でチヨ様への手紙持たせるから渡しといてねと伝えたチクマはテーブルの上に並べられた料理を見て「とりあえずご飯食べようか、それから話をしようと思う」と仕切った。


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