宝石とさよなら | ナノ


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「お、おはようございます……」
職場の部屋が違うだけで階まで同じな為、ぎこちない歩き方をするナマエを心配してチクマのところまで荷物とナマエを届けに来た我愛羅。
案の定いつも通り名残惜しそうに戸口で喧しく心配事を並べ立てていた風影の尻を蹴り出したチクマにお前後で覚えてろよと恨みがましく呪言を唱えて去っていった我愛羅をナマエとチクマは見送った。

「ナマエ、ばば臭いって言うか湿布臭いんだけど何したの」
「チヨ様に鍛えてもらうって報告したらなんか我愛羅君に夕食後筋トレをやらされまして…ただの筋肉痛」
リー君よりは妥協してもらえてたんだけどね…と空笑いを返し空いていた机にゆっくり向かうと腰を下ろした。
忍は大体血族か幼いころから鍛えている者しか残れない為、筋肉痛とは無縁の生活を送ってきているものが大半である。
チクマもその中の一人だった為、新しく配置した机についたナマエに今から使う書類を渡しながらも興味深そうに状態をメモをし出した。
欠伸をかみ殺しているマジュと朝の一杯とばかりにお茶を啜っていたオウメイが人がそろったのになかなか本題に入らないチクマに痺れを切らして「隊長、会議」と促す。
ああそうだったと愛用の手帳を懐にしまうとチクマはずれ落ちた眼鏡をあげ直し、今朝方引っ張ってきた黒板に“中忍試験”とチョークを走らせた。
「ちょうど一ヶ月後にこの里で中忍試験を開催します」
ナマエがわからないだろうから簡単な説明を交えてくけれどと一言置くと、チクマは再びチョークを走らせていった。

「中忍試験は下忍たちの昇進試験みたいなもので、まあ忍は軍隊も同然だから死の危険性は常に付きまとうモノになる」
約一月かけて試験をするけど最終試験には各国の大名たちが自国の軍備予算を決める為に観戦したりする為警備の目も増やして穴が開いていないかいつも以上に確認していくことになる。
特に近年砂は軍備縮小の煽りを受けて運営がキツイ状況だ。彼らの実力次第ではさらに経営が厳しくなる為砂の子たちには頑張ってもらいたい。
そこで私は昨日君たち三人に相談役と上役たちから形式的な承諾サインを貰ってくるように頼んだ。
心配だったチヨバア様たちもナマエが貰ってくることが出来たので本題に入りたいと思う。
チクマは流れるように言葉を奏で黒板を二つにする線を引いた後、片方に自分の名前を書いて振り向いた。

「君たちの中で二人、下忍たちのサポートをして貰う」
試験を控えている彼らは気づかないうちにストレスを抱え込んでいることもあるだろうし逆にはしゃぎ注意が散漫になっている奴もいるだろう。
4人1組を組ませているものの、いつも見ている担当の上忍では気付かない事もある、そんな彼らの様子を見てケアしてもらいたい。これは我愛羅からの依頼だ。
そしてもう一つ、こちらは私からの任務なのだが、下忍たちのデータを少しでも集めてもらいたい。
私も砂隠れの全忍の情報を持っているわけじゃないし、これは今後任務をするときに組ませる臨時チームの編成にも役に立つ。
それと他国の情報を手に入れるいい機会だ。同じ書類を各国にも送るけどその整理もお願いしたい。
……もう一つは私と共に上役たちと警備の相談やら会議やらだが、サポートチームは多くの情報を集めるために単独任務となる。
試験中はいつもと違う忙しさになるだろうが頑張ってここを乗り切っていこう。
隊長の励ましに書類を指ではじきながら三者三様の返事を返せばよしよしと満足そうに頷き「で、そのメンバーは私が決めてもいいかな」と眼鏡を光らせた。
チクマの視線の流れに沿う様に左から順に頷いていく私達に再び黒板の方へと身体を反転させると自分の下にオウメイ、サポートチームにマジュとナマエの名前を書いた。

「じゃあこういう事でよろしく。お互い連絡を取り合えるように今から契約を交わします」
そう言って懐から既に術式の書かれた巻物を取り出すと、マジュとオウメイはカプリと犬歯で親指に傷をつけ、それを術式の円の中に押し付けた。
「ナマエ、チャクラは練れるね?」
二人に倣い最後尾からちらりと覗きこんでいた私が目の前に来るとチクマちゃんはそう尋ねてきたので分身くらいなら…と返せばそれでいいのだと良く研がれた黒光りするクナイを取り出し渡してきた。
「慣れないと難しいだろうからこれね。少し傷つけて血をにじませたらチャクラ流したまま押し付けて」
チヨバア様のところで見たと思うけどこれ私の機密文書が読めるようになる術で、読むときはチャクラを流せば見えるようになるからと軽い説明をしてくれた。
さらにサインをした後は自動的に再び白紙に戻ってくれるらしく、あまりに便利な術に半分ほど仕様を忘れかけた。
ああ、チヨ様の言っていた炙り出しの契約はこれか……。案外回収早かったな。
親指に走った小さな痛みを我慢し書類に押し付けた後、巻物から離した傷口を口で吸った。


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