宝石とさよなら | ナノ


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自身の目の前でポーチの中から蛙のがま口を開けてお札を取り出し、オレと親しげに話をするナマエに吃驚している店員に渡した。
確かにシュデン達くらいとしか雑談をせず、人よりは幾分か内向的だったがそこまでだろうか……?
オレだって近くに来た人間とくらいは話しが……。ああ、皆何故か一定の距離で牽制し合っていたから任務時以外だと珍しいわけか。
一人疑問を自己解決した我愛羅は購入した食材をナマエが手を出す前に受け取る。案の定ナマエがそこまでしなくていいとナマエの鞄とトートで両手の塞がったオレに眉を下げてきた。
「気にするな、疲れてるだろう?」
「いやぁ、そこまでじゃないかな。それなら我愛羅君の方が疲れてるんじゃない?」
頭の方も体力的にも。里長として多大な負担がかかっているはずだと指摘して来た為そのくらいやらせてくれと懇願すればナマエは観念したらしい。
店員からおつりを受け取りながら「じゃあ頼むね、ありがとう」とくすぐったい言葉をかけられた。

「そうそう聞いてくれる我愛羅君」
私チヨ様に鍛えてもらえることになったんだ。いえーい。
一瞬緑のタイツを彷彿とさせるような笑みと指二本を立てこちらに見せつけるナマエに再びオレの機嫌が降下していった。
「……俺じゃだめなのか?」
「我愛羅君は忙しいじゃない、業務はしっかりやってください」
サビ残無いんだし楽園みたいなもんだよとよくわからない単語を出して諭すナマエにむうと眉間にしわを寄せ、ずれかけて気持ち悪かったトートをかけなおす。
オレが守ると主張するもナマエはそれだけじゃだめなんだと子供に諭すように語りかけてくるのが気に入らない。
だがしかめっ面の戻らないオレに、力がないと一緒に居られないとナマエが口にした為、以降は閉口することになった。
ナマエは昔のオレと同じ道を辿ろうとしていた。化け物が入っていない分彼女が悲しむリスクは減るだろうがそれでもナマエにとっては茨の道だろう。
真逆の位置にいたナマエがこちらに落ちてくるように追い立てたのは自分達だが、逃げ道を塞いだのはナマエ自身だった。
内心ほくそ笑むも、相変わらず硬い表情筋が我愛羅の不穏な考えを隠すようにカバーし「解った」と一言、音を上げた様に見せた。

「……まあナマエが怪我をするのはオレも見たくないからな。それと基礎はオレが相手をしよう」
「えぇー…。スパルタっぽいしノーサンキュ…いてて痛い我愛羅君ごめんなさい」
不満げに顔を歪めた我愛羅はからかう様に不満を口にしたナマエの頬を無言で引っ張った。


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