宝石とさよなら | ナノ


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「……8年前、我愛羅君の元でひと月ほど守鶴というモノに対してのストッパー役をしておりました」
傀儡を手元に戻され巻物にしまいこんでしまったチヨを見て、警戒は解かずに切れた息を整えて居たナマエは従う。
我愛羅君は話をしないと思うが羅砂さんの方はどうだかわからない。何かこの状況から変わるかと一抹の望みをかければ「ああ、キンコウの」と意外な言葉が返ってきた。
「……知ってるんですか」
「伊達にこの歳まで生きてる訳じゃない、羅砂の時代からすでに相談役だ」
例え引退していても相談役に報告が行くようになっているのだとどの国も同じシステムになっているはずのそれを答えてやった。
黙り込んでしまったナマエをじろりと舐めるように観察する。これが一時自分が開発していた術の亜種なのか……。

もう少しあの子の時代が後ならば何かが変わっていたのかもしれない。いや、自分には羅砂のように他人に頼るなんて芸当はできない、か。
こんな里の負担になりそうな奴をしたいに放り込んだ小僧の気は知れないが、途中まで自分も同じように開発していた術でただの肉壁が生まれたなんてみっともないとチヨは目を瞑った。
実力の差はとうに出ているはずだがチクマとマタンから間接的に報告は来ており、その身体の仕様もわかっているのだ。
こちらは認知済みだと言ったのに、まだキンコウの身体を使わないのはコイツの甘さだ。力があるならそれに頼ればいいのになんて馬鹿なんだ。
それに、これがそれなりに可愛がっていたキンコウの慣れの果てだと思うと切ないものがある。
眉間を揉み解すチヨはいつの間にか「チクマではなく、お前はどっちに用がある?」と訪ねていた。

「わ、私はエビゾウ様に……」
マタンさんから薦められましたので、扱いてもらいたくて来ましたと返し頭を下げる。
そんなナマエを後目に再び釣竿を出したエビゾウは興味ないと言いたげに再度水の中へと糸を垂らした。
「エビゾウ、こやつはお前を御指名らしいぞ」
「姉ちゃん構うこたない、今の砂の問題だ。ワシは反対しとくぞ……」
「という事じゃ、お前はわしが貰おう」
構わんだろうと目を開いたチヨが不敵な笑みを向ければ、ナマエは一瞬理解が追いつかなかったのか硬直すると、頭をあげチヨの顔を視界に入れもう一度お願いしますと口にしながら頭を下げた。
「……あれ、でも私攻撃一つも」
「お前がド下手でつまらなかったからやめだ、みっちり扱いてやるわ」
ワシが遊べる程度になとエビゾウの方に釣竿をよこせと手を出し、ギャハと可愛げのある笑いを返した。


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