宝石とさよなら | ナノ


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タンゲを個室に案内した後瞬身で帰ってきたチクマちゃんのそばにはシュデンちゃんがいた。
「我愛羅様、会議が途中です」
衝撃的事実である。え、我愛羅君会議ほっぽり出してきたの?何やってんの?
寝転がっている私の顔色が怒気を含む色に変化したことに気付き、我愛羅君は「わかった」と一言だけ発し逃げるように立ち去って行った。それを追いかけるように瞬身をして消えたシュデンちゃんもいなくなった部屋で顔をしかめた。
こういう時の我愛羅君の逃げ足は速い。ただ、流石に仕事をほっぽり出したのは頂けないので後であったら一言言っておかないと。
母や乳母という立ち位置は否定されたものの、いまだに三人とも慕ってくれているし一言ならいいだろう。私も大切な三人が後ろ指をさされるのは悲しい。
「そうそう、ちゃんと説明しておこうと思って」
私と違い満面の笑みでひらひらと手の平を振り二人を見送っていたチクマちゃんが振り返り一言目にそう発した。
「ああ、仕事ですよね。入院している一週間だけなのかわからないですけど私付き合えそうにないです」
母親の代わりをしていただけで母でもない、ヒーローでもない。そんな私に彼が従ってくれるとは到底思えない。
そこを突いて別の誰かへと仕事を回したかったのだが、彼女はふるふると首を横に振るとトレードマークの眼鏡を光らせながら持ち上げる。
「残念ながら忍でないナマエにしかできないんだよなー」
確かに彼はあの歳で女遊びをしている、くノ一のようにとは言わないけど未来の大名様をこちらの手中に置いておくことも立派な仕事である。
マタンが土台をしいといてくれたはずだし頼むよーと語尾を伸ばし満面の笑みをむければ私は観念したと両手をあげて了承するしかなかった。
「仕事なんでしょ?」
「そのとおりです」
「拒否権ないじゃないですか……」
まだ件の負傷した忍たちの切られた指だのを複製しなければならないので入院することになっている。
その間という事は期限があり、彼が大事を取らされ入院している一週間で手懐けろと言う事なのだろう。
頭が痛くなってきた。麻酔とはまた違った原因の頭痛に私は目頭を押さえた。


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