宝石とさよなら | ナノ


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大名様と手術と今後の入院生活の注意事項と説明を再度確認していれば部屋の中が少し騒がしくなったのでちらと中に視線をやる。
防音加工もしているから聞こえるのは聴覚を鍛えている忍程度だし、傍から見れば足を組んだナマエが笑って話をしているようにしか見えない。
内容も五代目曰く察しのいいナマエにはきちんと通じていたようで、対面し挨拶がてら大名の子の意表をつくことが出来たようだ。
接し方が少しキンコウに似てるのが気になるが……、まあ許容範囲内である。殴ってもいないしタンゲも大人しく座り名前を答えた。
自分のいう事を聞かないタイプの新しい女性を目の前にした彼は困っているようだが、ナマエも普段のほんわかした姿とは別に大人の打算的な思考も持ち合わせている。
まだまだ子供であるあの兄弟達とは違い、身分差や劣等感の刷り込まれていない彼女なら手の平であそんでくれるだろう。
必ずや不自由なくタンゲ様の手を戻して御覧に入れますと頭を下げ、大名を帰らせ中へと入った。
「それじゃあ、タンゲ様、もう一度説明しますね」
今日だけで何度説明したか忘れるほど口を動かしているが、一応規約だし言っておかないと後で何か言われても遅いからなぁと内心盛大な溜息をつきながらニコリと微笑む。
思考の飛んでいたタンゲはマタンの呼びかけに我を取り戻したもののいつもの調子はまだ戻らないようだった。

ナマエの精神に負担をかけないよう全身麻酔し良く眠っているのを確認した後開いたナマエの胸部から臓器を取り出しペースト状にしていた。
目の端で起こっているグロテスクな行為にタンゲは顔を背けて視界に入れないようにしているが、四肢は固定しているから耳は隠せず敏感に音を拾っているようだ。
あえて局部麻酔にしているのはタンゲがまだ不安定な子供だからという理由もあるが、それ以上に彼女の事を見てほしかったからである。
目で見ることにより、大名の考えが少しずつ変わっていってくれればいい。この子供は死ななければ次期大名の一人となるわけだし。
彼女が昔言っていたように魔法のような忍術を使われている身体を点検しているうちにペーストして放置しておいたそれが膨らみだした。
一度崩してしまったため隣り合った細胞から情報が読み取れないのか形を作り出すことのできない塊を少し取り先ほど切り取った臓器の傷口へと戻す。
読み取りだした塊は膨れだし元の大きさに戻ると次第に色をに沈着させていった。

ナマエの方を縫合し終え、顔を背けているタンゲの方に歩み寄る。
マスクの下からくぐもった音で名前を呼ぶとびくりと背中を震わせたタンゲが恐る恐るこちらに顔を向けた。
「正直一人でやるのはすっごい疲れるんだよね」
本来ならチームでやる手術だからねなんていろいろ言いたいことはあったが我慢し手術する人間を指定してきた大名の文句を垂れる。
忍は信用していないと普段から豪語する彼が今この手術室の周りに監視の為に配置させているのもまた忍で、言行不一致な言い分に反吐が出そうだった。
「彼女も本来ならもっと早く退院出来て美味しいものを食べに行けたんだ」
タンゲの手術の後にもまだ数人分の負傷者の手術が残っている。比較的軽症だから後回しになってしまったが彼らの抜けている穴を埋める為に働きづめになっている忍だっている。
自分だって仮眠時間を削らなくても良かったし、今大名の接待をしているチクマだって普通の任務をして昼食をとっている時間だったのだ。
一人の為に里がここまで不自由しているのだと小声で呟けば普段なら「だから?」と生意気な口をきいていたであろう少年は口を噤んだままマタンに視線をやった。
先にナマエから臓器を取り出すのを見せたのが聞いたらしいと内心ほくそ笑むマタンにタンゲは口を開いた。
「でも、忍は依頼されたら……」
「彼女は忍じゃないよ」
君たちと同じ一般人だ。目を細め見下ろしたマタンと反対にタンゲは目を見開きナマエに方へと顔を向けた。


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