宝石とさよなら | ナノ


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砂の為だから。キンコウに2度言い聞かせたヤリスマルが顔を布で覆う。なにかを言いかけたキンコウも同じように顔布で目元以外を隠した。
ナマエの首元に突き付けたクナイで外へと誘導する。抵抗しないナマエは背中から他の暗部に暗器で傷をつけられる。
唯一、心臓に傷をつけるようにと変な注文を受けていた。
既にキンコウが術を発動している為近寄れないので、遠目ではあるがナマエへと刺さったクナイの深さから先が触れたことを確認して滲んだ視界のまま片腕をあげた。
異変に気づき駆け寄ってきた我愛羅を吠えとめるとナマエは我愛羅に小さく伝え、岩の下に隠された。

暴走した我愛羅が任務にあたっていた暗部を血の海へと沈め、しばらく岩に手を置き頭をぶつけていた。
1時間ほどが経過し狂ったような笑みを浮かべた我愛羅が守鶴をしまい一人屋敷へ帰っていったのを見計らい、羅砂と共に惨劇の地ヘ降り立つ。

「割と良いコストの犬だったんだがな」
特にキンコウの方は、そう言って息絶え肉塊となった彼女の腕を掴む。
暴走した後の我愛羅はひどく消耗し、動揺から気配を読み取るのが鈍くなるのだがあまりちんたらしていられるほどでもない。
「風影様……」
「わかってる」
死者と戯れている時間はないと諫言すれば握っていた腕を落とし、片手で砂金を持ち上げた。
「……ミョウジナマエはどこだ?」


消えてしまったナマエの遺体を暗部に捜索させる。
我愛羅が取り出したのかと感知を得意とする者に探らせ、さらに自身も離れへと出向いたが、いたのは羅砂と虚空を交互に見る化け物を入れた子だけだった。
屋敷にもいないことを確認した羅砂が息子と一言も会話をせずに出て行った。後ろ髪をひかれたが自身も加担した身であるマタンは声を掛けることは出来なかった。
「ねえ」
少し離れたところから、ぼんやりとたたずんでいた我愛羅が自分に声をかけてきた。
なんだと返したマタンに商店のあわない目で「ナマエはいつ帰ってくるかな」と、へらりと笑った。
現実逃避を始めた目の前の子供が暴れないような言葉をかけておくのも悪くない。
マタンはそう考えると「我愛羅が里の為にイイ子になったら来るんじゃないか」と曖昧に返し重厚なドアを開け霊安室へと向かった。


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