エクボの悪魔のささやきには反応しないつもりだったが非常に残念なことに体は正直だった。
勝手に動く首にぬおお…なんて抵抗してみればエクボは笑う。
「朝になったらイイトコに連れてってやるよ」
だから前向きに霊力の供給検討してくれよなーなんて宣うエクボ。
なんでこんな必死に自分を売り込んだり営業してるのか知らないけど…とりあえずまともなバイト先を求む。無理か。


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「嘘やん普通に事務所だ……」
「なんだと思ったんだよ」
「賽の河原とかそういうとこかと」
自称悪霊が普通のところに連れてくと思う方が異常だと思う。
流石に酷すぎるぞなんて文句たらたらのエクボを一瞥し看板へと視線を流す。思わず目を細めてしまった。
霊とか相談所、胡散臭さが事務所名からにじみ出てるってどういうことなの…やっぱり悪霊がまともなところを紹介できるはずなかったんじゃん…。あってるじゃん私。
怖気づく私の前をふよふよと上下するエクボが来ねぇの?と素朴な表情で問いかける。行きます、行きますよ…。
そこまで短くないはずの階段だったが今の私には不十分で。心構えをしようと相談所の目の前で一息つく。
何やってんだコイツと言いたげなエクボの視線をかわし戸に手を掛けた。

「エクボ、その人お客さん?」
「シッ…シゲオ!お前学校は……」
「今日土曜日だから午前だけだよ」
ああーくっそ忘れてたなんて額を…額?いや一応額なのか?…目の上を叩き天を仰ぐエクボにどこにでもいそうな素朴な少年の顔が鋭くなった。

「また悪いことしてんの?エクボ」
「誤解だよシゲオ〜!」
ちょっとナマエちゃん、シゲオに言ってやってよーなんて私の後ろに隠れたエクボがマジでほんと頼むなんて小さく耳打ちする。
そんなこの子のことが怖いのかこの悪霊…。まあ紹介してもらってないこのタイミングで突き出すのもあれだし昨日しっかり助けてもらってるしな…。仕方あるまい。
「そうそう、昨日追いかけられてたところをエクボに助けてもらったんだよ」
んで次追われる可能性無きにしも非ずだしその時にエクボが散歩してるとも限らないじゃん?
相談したらここで対処法を教えてもらえばって言われてさ。

ペラペラと事実半分嘘半分を混ぜ込んだ話を少年に話す。
なんか後ろで霊幻と同じタイプかよなんてドン引きしてるエクボはあとで殴ろう。
表情を一切変えぬまま話したのが功をなしたらしく「エクボも人助けできるんだね、見なおした」なんて感心したように頷く少年。
…その口から出た己の評価を嘆くエクボをみて溜飲が下がってしまったので殴るのはやめてあげようかな。


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