「ボス、モテ気来ましたわ」
聞きたい?聞くでしょ?バイト辞めるけどそれまではっつって昨日ヘルプ入ったわけなんだけどその時にさぁ、デートしませんかって言われてさぁ。ナマエの有無を言わせない態度にも霊幻は屈しない。どうでもいいと突き放しネットサーフィンを続ける。お、この女優結婚したのか、割と好きだったんだけどな。ワンチャン付き合えると思ってる時点で夢を見すぎである。せめて出会ってからにしろなんておそらくそんなことを突っ込んでくれるだろうエクボは現在相談所に出入りをしていない。なお霊幻はエクボにだけは無敵状態なのでその突っ込みも意味をなさないのであるが。
「でさ、聞いたわけなんだけど中学生だっつーんすよ」
「いやお前、それはまずいだろ…」
中坊っつったらもうモブと一緒だぞ…。なんだかんだでちゃんと話を聞いていた霊幻が突っ込む。普通にまずい。お前こないだ20になったばかりだろ?男女逆転して考えてみろ確実にロリコンのレッテルを張られてるぞ、つまりお前ショタコンっつーことになるぞ。従業員が捕まって相談所の悪評が広まるのは何としても避けたい霊幻が追及する。絶対やめろ。でも多感な時期の子供が相手だからやんわりと振れ。中々高度な技術を求めてくる霊幻にバカ野郎普通に断りましたわと口悪く答えたナマエに指をさし椅子へと腰を落ち着ける。
「お前、その言葉遣いで断ってないだろうな?」
「流石に猫被りましたんで安心してください」
私だってバイトすべて切ってきた途端相談所クビからの無職とか嫌だわと鼻で笑う。そ、そうだよな。流石だわ先日の契約条件に仕事はここ一本にすることを加えた俺。めっちゃ偉い。その代わりモブレベルでの契約は出来なかったけども。当たり前である。口に出していれば「300円では無休でも生活費が払えないだろうが」とキレられていたのは想像に容易い。減ってしまった自分の取り分に遠い目をしつつ物好きがいたもんだなと零した。あのモブですら高根の花というかマドンナみたいな子を狙ってんのにな。「お、戦争か?」地雷である。
「落ち着け、労力の無駄だ」
「それもそうだわ」
血管を浮かせていた拳を広げ、ストンとソファーへ身体を落とした。熱しやすいが冷めやすくもあるナマエは諭せばおちついてくれる所がいい。こういうところは俺たち似てるよなぁなんて指で頬を叩く霊幻に「冷凍庫のたこ焼き食べていい?」と許可を取る。俺の分もチンして。了解。出会ってまだ三日の詐欺師二人の慣れ具合がおかしい。やはりエクボがいないのでそんな突っ込みが響くことはないのである。





待ち伏せをされていたらしい。駅前で上司と別れてからもついてくる気配にため息をついた。
はーあ、最近こういうことすごい起こるな?なんで?なんかフェロモン出てんの私?
最近部活に入ったらしいモブ君に気を使ってか必要な時に呼び出すからいいぞと返してるので当然頼れる人間はいない。ボス?ありゃ駄目だ。霊見えてないからな。いやでも実体のあるストーカーならワンチャンありか?まあこのまま家に帰っても自宅知られるだけだし大通りに出て駅に戻…。
「すみません、ミョウジナマエさんですね?」
話しかけてきやがったよこいつ。一応言葉通じるから数日前の悪霊みたいなやつじゃなくてちゃんとしたストーカーなのだろう、ちゃんとしたストーカーってなんだ。脳内でノリ突っ込みが炸裂したがこういうのエクボの役目では?エクボ様助けて。ツッコミ不足とストーキング被害にあってる件を助けて。
「怖がらせてごめんなさい」
私こういうものです。懐から営業マンよろしく名刺を取り出したゲームに出てくるようなわかりやすい研究員姿の男が頭を下げてきたので思わず受け取って同じく頭を下げる。これはどうもご丁寧になんつってるが私実は会社には入ったことないので細かい礼儀は知らないんだよなー、不躾でも許して欲しいですねー。どこから攻撃されてもいいように気を張ったまま名刺の文字を読んだ。蜜裏…覚醒ラボ……?胡散くさ……。さらに一段階胡散臭い名前の事務所の従業員になってることは棚に上げた。


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