シルク·ドゥ·デエス | ナノ


▼ 炊き立てご飯 2



カカシが火影をはさみハクベイに詰め寄っていた頃、時を同じくして某所焼肉屋にて任務後恒例の打ち上げをしていたアスマ達一行はチョウジを除き盛大に吹き出していた。
チェーン店でない飲食店で天井からぶら下がる台に乗せられた箱型のテレビ…という情緒のある昔ながらの内装をしていた焼肉Qだったことが仇なしたわけである。
互いに飲んでいた水を掛け合うという大惨事に陥りつつも、零した水を懸命にふき取り顔をしかめた店員に愛想笑いをして三人は再びテレビへと目を向けた。
が、残念なことに15秒しか流れないそれはすでに次のCMに移っていた為、再度自分の目で確認することが出来なかった。

「さっきの、ハクベイさんじゃね?」
「ああ、やっぱりシカマルもそう思った?」
暗部が顔を出すなんて…と離れたカカシと同じ感想を抱いたイノが腕を組んで突っ込んだためそれに頷いて同意を示した。
敵のいなくなったチョウジはすでに焼いていた肉の半分ほどを喰いつくしているが、シカマルとイノはそれに噛み付くわけでもなくただ動揺を静めている。
忍がテレビに顔出しだなんて前代未聞ではないだろうか。
そんな年数を生きているわけでもないが、影や重役達以外で忍をテレビで見たのは初めてである。
件の稲刈り任務からたびたび会うがあの人の事だから米一年分とでも言われたんじゃないかとシカマルは遠い目をして呟いた。
「多分それであってんな」アスマが懐から取り出しかけた煙草をしまった。
自宅じゃなくて飲食店だってことを忘れていたがそれを思い出させてくれたのが隣に座っていた一般の団体客だった。

「今の子可愛くね?」
お前ああいう子が好みだったかと同じテーブルで向かい合っているうちの一人に目線をやり、それに気づいた男が「童顔だけど胸大きそうじゃん」とこそりと答えた。
一般人なら聞こえない様な雑音の中の会話だったが流石にそこは忍であり、四人とも耳を大きくして会話を入れていた。

「カカシ先生ってハクベイさんが好きなんじゃなかったっけ……」
イノが少し身をのり出し顔を寄せこそりと口を窄めた。
例のテーブル側に片手を添えて音が流れるのを防ぐイノに黙々と肉を口に運んでいたチョウジがそうなの?と反応しながらイノの下に隠れた肉を自分お皿へちゃっかり確保する。
「……マジかよアスマ、道端で官能小説読んでるような人なのに?」
「女は噂が早いな、どっこいマジなんだよこれが」
たまに自分の事でからかわれたりはしていたが、本人不在の同僚の恋バナをまさか自分の部下とするとは思わなかった。
シカマルの信じらんねぇと言う呟きがオレに向けられたがカカシと会うたびに若干アブノーマルな報告を聞いているオレだって信じらんねぇよと返した。
「今日のハクベイさんは水の国産のお米を買ってたけどやっぱり味違うのかね?」だの「オレさぁ畑でも田んぼのカカシでもなくってあの米になりたいんだよねぇ」だの言ってくる同僚なんてオレは知らない、知ってたまるか。
一目ぼれとか言ってたがハクベイはハクベイで血肉だけじゃなく脳みそも米で出来てるのかって思わず突っ込みたくなる鈍さだし一方通行な男の悲しい恋バナなんて詳しくしたくはないからカカシ本人に聞いてくれとイノのきらりと光った瞳に怖気づき放り投げる。
お前は好きかもしれないけどオレ別に好きじゃないからな。そう返せば不満たらたらでほぼ食われ尽くした一皿目の肉に手を付け始めた。

「てかよぉ、カカシ先生がそういう感じならこれってやばいんじゃねぇの?」
気付かれないように小さく顎で隣のテーブルを指したシカマルにアスマは目を向ける。
先ほど端の方で二人だけで盛り上がっていた団体客がいつの間にか六人全員でハクベイについてを語りだしていたのだ。
オレあの食堂で見たことあると顎を擦りながら肉をひっくり返した男に斜め向かいが「くノ一だろ?とっつきにくそうだぜ」と反対した。
「いや、おかみさんと話してたの見たことあるけど声も可愛いし暗部なのに人懐こい性格してそうだったぞ」
「まじか、なら今度会いに行こう」
顔もプロポーションも上々で性格もいいなら優良物件じゃん、暗部だったらお給料もいいだろうしピンチになったら守ってくれそうじゃん。
そのままお近づきになりたいだなんて口にし、肉を鉄板に押し付けていた。

「男って皆ああなのアスマ先生?」
「暗部って機密じゃなかったのかよ、大丈夫か木の葉」
青筋を浮かべたイノと、的確なシカマルの突っ込みに「オレ胃が痛くなってきた」とアスマがタバコと一緒に常備していた胃薬を取り出した。
それを見たチョウジが「先生、ならボクが先生の分まで食べてあげるね?もったいないし」と箸を伸ばした為アスマは三分の一だけチョウジに分けてやったのだった。


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