シルク·ドゥ·デエス | ナノ


▼ さつま芋ご飯



サスケは「明日8時に里門の前集合」というカカシとの約束を反芻しつつ朝露で濡れた土を蹴り上げた。
とんだ失態である。所謂遅刻というモノだったが屋根を伝って走ればまだ数分程度でどうにかなりそうだと上下に移動する。
まあカカシの奴はどうせ遅刻してくるだろうしナルトに負けてなきゃあ別に……。

「サスケ遅いぞ!20秒遅刻だ」
「…っんでいつも数時間遅れてくるのにいるんだよ!」
貧乏ゆすりをして仁王立ちでこちらを睨んでは偉そうに正論を並べ立てる担任に舌打ちし、顔を歪めた。
ナルトは来てないようだがサクラはともかくカカシがいるのはおかしい、幻術じゃないだろうなと気配を探るも見知ったチャクラしか見当たらなかったからサクラもカカシも本物なのだろう。
弄るネタを与えてしまったと自分の事を棚に上げて遅刻に苛ついているカカシから離れサクラの元へと向かう。
おはようサスケ君といつもの様に挨拶をしてくるサクラにああとだけ返し、腕を組んだままいつから居たんだとカカシの事を聞いた。
「解らない、けど私より先にここに来てたことは確かよ」
「槍でも降ってきそうだな……」
今日の任務ってSランクか?ようやく大通りに姿を現せた黄色の頭にサスケは目を細めながらサクラに問う。
同じように、拳を作って制裁の準備を整えたサクラが持ち物は確実にDランクだけどねと答えようとして指を指した。

「……誰かといるわね」
手を振りながらのんびりと歩いてこちらに向かってくるチームメイトの隣に白いフード付パーカーの人間が同じ歩調で向かってくる。
誰だあれ。顔を見合わせたサスケとサクラの真ん中を押しのけるようにカカシがそれは風のように通り抜けていった。

「ハクベイさんおはようございます!コラ、ナルトは遅刻しちゃダメだって言ったでしょ」
「ごめんなさいカカシさん、私も寝坊しちゃいました」
あははとフードの上から頭を掻くハクベイに優しい先生っぷりを見せつけるように軽く叱っていたカカシもしょうがないですよとコロッと態度を変えざるを得ない。
その様子を少し離れた位置で口を開けてみていたサスケとサクラに「という事だから。今日の任務はハクベイさんと一緒に芋掘り」とハートのつきそうなほど楽しげに内容を投げると、頑張りましょうねとハクベイの方にくるりと体を反した。
自分達の先生の見たことも無い変わり身の早さに開けたままだった口から吃驚を物語る音が飛び出て来た。



「ああ、CMを見てうちの作物もPRしてほしいという依頼だったんですね」
「お米じゃないから違いとか解らないし断ったんだけどさぁ」
「そこは農家同士のつながりでお米を報酬に提示されたわけか……」
まあそういうわけです、人増やしてもいいかって聞いたら中忍でなければまだお金に余裕あるって言われて探してたところにカカシ先生が名乗り出てくれたんだ。
本当ありがたいよねぇと芋の収穫を終えて縁側で茶を飲みながらハクベイはカカシにお礼を言う。

ハクベイは覆面側に座っているためいやいや良いんですよと返したカカシの顔が覆面の下でにまにまと表情筋を緩めているのには気づいていないようだった。
その顔を覗き込んでは顔を歪めていたサスケの耳に「カカシ先生は今みたいに文句も何も言わずに引き受けてくれたんだ、かっこいいよねぇ」と追撃のべた褒め攻撃をするハクベイに再びカカシの顔を覗き込む。
「いやぁそんな、褒められてもなにも出ませんよ」だなんて謙遜し頭を掻くカカシの顔をサスケは見なかったことにして指を組むとその上に目頭を乗せた。
自分の担任があんな表情をするなんて……、いややめておこう。忘れろオレ。
成人男性のとろけきった顔が夢に出てきそうで必死に記憶の消去に挑むサスケに助け舟を出す様に、先ほどまで土間へと消えていた依頼主とその妻が5つのどんぶりを運んできた。

「みなさん、芋の混ぜ込みご飯出来ましたよ」
「わぁい、待ってました!」
「頂きますってばよ!」
食い意地の張ったナルトとハクベイが早速どんぶりの蓋をあけ、湯気をモロに受けて目を瞑ったのであった。


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