「関東地区合同学園祭?」
「うん。関東地区のテニス強豪校を集めて出店や展示、発表その他諸々……あまりテニスに関係なさそうなんだけど、氷帝の跡部が提案してきたんだ。青学、六角、山吹、不動峰、聖ルドルフ、城成湘南……あとゲストとして四天宝寺と比嘉が参加するらしい。かなり大規模だね」
「因みに会場は氷帝学園、跡部・榊グループがスポンサーにつくそうだ」
「と、いうことは……」
「準備その他の費用、全て氷帝が出すとの事だ」
「やった――!!」

丸井と赤也が飛び上がって喜ぶ。

「じゃあ部長!俺ら何します?」
「それなんだけど。今回は各校の交流が目的だから、出し物は予め決まっていて各校からそれぞれ何人かづつ割り振る仕組みなんだ」
「ええー!!」
「只それ以外に学校単位で出し物をしてもいいみたいだから、まあマンパワーを考えると幾つも出来ないけど、一つ二つくらいは出来るんじゃないかな」
「そうこなくっちゃ!早速決めちまいましょうよ!!」









「大変なことになりましたね……」
「あそこの部長さん、派手好きじゃもんな」

ノートを前に、仁王と柳生の二人は額を合わせクスクス笑った。大変、と言っても二人共こういうのは嫌いではない。寧ろ大歓迎だ。早速学園祭の最後に行われるエキシビジョンマッチに向け、仁王の部屋で作戦を立てていた。

「エキシビジョン、と言っても負けるわけにはいかんからのう」
「当然です。どのダブルスと当たるか当日まで不明との事ですからね、どこと当たっても大丈夫なように対策を立てておきましょう」

カリカリ、と柳生は万年筆を滑らす。

「ところでお前さん、それまで何をするんじゃ?」
「風紀委員の腕を買われて構内見回りの担当になりました。本来なら真田君が適任なのでしょうが、真田君は病み上がりの幸村君の代わりに部長代行としてのお仕事が多いらしく」
「……それ、単に幸村が面倒臭がってるだけの気がするのう」
「あと立海模擬店の当番もありますよ」
「スイーツ+ブラジル料理店か。ブン太もジャッカルも張り切っているからの。従業員より客になりたいぜよ」
「切原クンたち2年生の一部はバンドをするそうですし、あの二人の作るものは本当に美味しいですから人手が足りなくなるでしょう。私たちは残り物に預かることにしましょうよ」
「へーへー」

ヤル気のない仁王の返事に柳生はサボっちゃ駄目ですよ、と付け加えた。

「ところで仁王くんは何の担当になったのですか?」
「ショッキングカップル5vs5」
「……何ですか、それ」
「『男女五人ずつ質問を出し合って理想の恋人を見つけるコーナー』ナリ。合コンみたいなものかのう」

すると柳生の顔が突然曇った。

「……やーぎゅ?」
「それ、出るんですか」
「へ?」
「だから、仁王くん……」

膝の上で拳をキュッと握り俯いた柳生に、仁王はあ、と顔を綻ばせる。

「もしかして……柳生さん、妬いてるの?」
「別に妬いてなんか!仁王くんに彼女が出来ようが出来まいが、私には……」
「やーぎゅ!!」

突然抱き竦められ、柳生は仁王の腕の中で顔を真っ赤にして抵抗するが、

「離してください、仁王くん!」
「嫌」

構うことなく仁王は柳生に口付けた。

「ン――っ!!」

事もあろうか舌で口唇を器用にこじ開け、柳生の舌を絡め取る。初めての事に柳生はどう対応して良いか判らず、二人分の唾液を口端から垂れ流し、されるがまま床に押し倒された。

「……柳生。俺が出場する訳じゃなかよ、裏方じゃ。出場者を騙して集める係ナリ」
「そう、ですか……」
「ホッとした?」

仁王はクククと笑い、柳生は頬を赤く染めプイとそっぽを向いた。

「……言ったじゃろ。俺は柳生を一番好いとう、と」
「におう、くん……?」

不意に声が真剣になり、柳生は己の身体に覆い被さる仁王を見上げた。――金色の瞳が潤み、心なしか息が荒い気がする。丸で獲物を前にした獣のようだと、柳生はぶるりと震えた。

「柳生……いい?」

耳元で仁王が低く囁く。何が?とは聞けなかった。聞いたら最後……

「――兄貴、入るよ」

突然部屋の戸が開く。二人は驚いて扉の方を見た。

「あ、柳生さん。こんにちは」

それは仁王の弟だった。部屋にスタスタと入ってくると、本棚から国語辞書を取り出した。

「それではお邪魔しました。しかし柳生さんでもプロレスごっこするんですね。意外です」
「あ、そう、プロレス……」

二人は顔を見合わせ、力無く笑った。




   



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