「俺、お前さんに恋……」
「ただいま柳生――!!」

その時、柳生の背後から二本の腕が飛び出しそのまま彼女の上半身を引き寄せた。柳生は強引に背を仰け反らされゴホゴホと咽せ込んだ。

「なっ……」
「ゆ、幸村君!!」

そこには悪びれた様子もなく、腕の主である幸村が笑顔で立っていた。

「具合はどう?平気?」
「たった今……死にかけました……」
「ゆゆゆゆ、幸村!!お前さん何しに……!」

第三者の突然の乱入に呆然としていた仁王が漸く持ち直し幸村に詰め寄る。幸村はガシッと仁王の肩を組むと、柳生に届かない位の声で囁く。

「仁王……お前、此処がどこだか判ってる?」
「……あ、」
「盛り上がるのは結構。だけどTPO考えてよね。門前でキスなんて見られてご覧よ、明日から柳生は晒し者決定だよ?ホモ野郎ってレッテル貼られるよ?」
「……スイマセンでした」
「判ればいいんだ」

幸村が仁王の肩を離すと、遠くから「柳生――!」と更に彼女を呼ぶ声が聞こえた。

「今頃ご到着かい?皆、動きが悪すぎるよ」
「あの、幸村。今更なんじゃが、お前さん本当に病気だったんか……?」

真田、柳、丸井、ジャッカルに加え赤也までいた。真田は駆け付けるなり、

「柳生、申し訳ない!!お前が体調を崩しているとも知らず、鉄拳制裁を加えるなぞ……」

と柳生を力強く抱き締めた。

「ちょ!真田君!!苦しいです!」
「離れんしゃい真田!柳生さんに触っていいのは俺だけぜよ!!」
「仁王の勝手な言い分は置いといて、柳生に加齢臭が移るのは嫌だよね」
「幸村……」
「相変わらず容赦がないな、精市は。弦一郎、比呂士が苦しがってるから離してやれ」

柳の仲介で柳生は解放される。間髪入れずに消毒じゃ――!!と仁王は柳生を抱いた。

「……仁王くん」

声を潜め柳生は仁王に問う。

「なんじゃ?」
「あの、私が女だってこと、皆さんには……」
「話してないぜよ。じゃなきゃ、真田が抱きつく訳はなか」
「ですよね」

すると柳生はイタズラな笑みを浮かべ仁王に囁いた。

「じゃあ、私たちだけの秘密ですね」
「そうじゃな」

仁王もニッと笑い返した。

「なーに悪巧みしてるんだろぃ。また赤也イジメの計画か?」
「なんスかそれ!!」
「なあ、柳生。お前のお袋さんが夕食ご馳走してくれるって言うんだが……良いのか?」

丸井と赤也がじゃれる傍らで、ジャッカルが遠慮がちに問うた。気が付けば柳生の母親も門前にいて、幸村たちと話していた。

「ええ!是非とも召し上がっていって下さい!!」

柳生は彼らに家に上がるよう促し、我々も行きましょうと仁王の手を取った。

「ところで仁王くん。さっき言いかけていたことなんですけど……」
「おん?」
「幸村君が乱入する前に、」
「ああ……あれか」

仁王は苦笑する。

「仁王くん?」
「……また次の機会な。急くことでも無かろ」

そして柳生の顔を見て優しく微笑んだ。

「だって俺も柳生さんもお互いが一番好き」
「仁王くん……」
「ずっと一緒じゃもん、な?」
「はい!!」









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