修学旅行三日目は京都であった。

「綺麗な所ですね。日本古来の建築物が緑と馴染んでとても美しい」
「ああ。忙しない生活で荒んだ心が浄化されるようだ」

社寺見学は学年全体で敷地内に入るには人数が多すぎる為、クラス単位で方々を回っていた。同じA組である柳生と真田は二人並んで風景を楽しんでいた。が。

「仁王!あの茶屋の抹茶パフェ、旨そうじゃねぇ!?」
「お前さんは本当に食いしん坊万歳じゃのう。ちいう訳で先生、俺ら腹痛で列抜けるけん。バス戻りますぅー」
「コラ―ッ!仁王!丸井!!」

後方B組の列から聞こえる騒がしい声に真田は嘆息し、柳生は苦笑する。振り向くと丸井は既に茶屋に向かって走り出しており、担任がその後を追っていた。そしてそれをニヤニヤ笑いながら傍観している仁王と目が合う。すると彼は、

「やーぎゅ!!真田に苛められてなか?殴られてなか!?」

とウインク付きで返した。

「まあ酷い。真田君は理由なく人を殴る方ではありませんよ?」
「そうだ。柳生は仁王が絡まなければ模範生だからな」
「……私、仁王くんと絡むと変わります?」
「ああ。意地が悪くなる」
「!!……判りました。私、仁王くんと距離を置きます!」
「な!!」

柳生の言葉に仁王は真っ青になり、手をわなわなと震わせる。

「真田!お前さん柳生に何吹き込んどるんじゃ!!」

そして丸井をやっと捕獲した担任に掴みかかった。

「先生!今すぐ俺をA組に編入させてくんしゃい!!」
「は、はあ!?」
「同じクラスなら距離置くち言うても四六時中同じ空間に居るけん出来んじゃろ!これ決定な!!」

そう宣言すると仁王はやーぎゅ!!と叫びながらA組の列に突進した。

「待て仁王!……って、丸井!!」

そして担任が仁王に気を取られた虚を衝き、丸井が再び脱走する。

「あらあら、大変ですねえ」
「……そういうところがだ、柳生」
「意地が悪い、ですか?」

ニコニコと笑う柳生の隣で真田は溜め息をついた。

「ところで真田君。仁王くんの話じゃないのですが、私、何となく下腹部に違和感を感じるのです」
「大丈夫か?」
「ええ。列を乱すのは心苦しいのですが、お手洗いに行って来ようと思います。直ぐ追いかけますので、先に行って頂けませんか」
「うむ、判った」




   



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