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リア充のススメ 01

俺の通う高校は、工業高校だけあって女子に比べて男子の割合が圧倒的に多い。
クラスに3分の1女子がいればかなりいい方で。科によっては男子だけのむさ苦しいクラスだってある。

俺のクラスのA組は幸いにも前者だ。
そしてこのA組には、クラスの半数以上の男子が気にしている女子がいる。


「二口くん、おはよう」
「はよ」


それが高宮葵。

専門分野を学ぶ工業高校は実習も多く、女子も男勝りなのが多い中、彼女は違った。なんで工業に?そう思うくらいに場違いな彼女。
クラスの男子に留まらず、学年…いや学校中でも人気が高い方だと思う。


「今日も朝練?」
「そー。朝から先輩が張り切りすぎで疲れた」
「ふふっ、そうなんだ。お疲れさま」


柔らかく笑う高宮は、やっぱりこの場所には不似合いな気がする。
ゴソゴソと鞄を漁っているのを何となく横目で眺めていると、嬉しそうに「あった」そう呟いたその横顔に思わず見惚れてしまった。


「はい、これあげる」


その直後にこちらを振り向いたので、見ていたのがバレたのかと一瞬焦ったけど、どうやら違うらしい。俺の方に差し出された高宮の手元に視線を落とすと、そこには見慣れたパッケージ。


「グミ…くれんの?」
「うん。良かったらどうぞ」
「さんきゅー。これ好きなんだ」
「本当?なら良かった」


酸味が強いグミで、俺の好物だ。もちろん断る理由なんかないのでありがたく受け取る。…けど、何でグミなんだ?俺は好きだけど、普通男にグミっていうチョイスあるか?偶々なのか、それとも…。


「それ、よく食べてるよね。だから二口くん好きなのかと思って」


見つけたから買ってみたんだ。
そう俺の気持ちを読んだように答える高宮を見て、心臓を鷲掴みにされたような感じになった。やべぇ、なんだこれ。

誤魔化すようにグミの封をやや乱雑に開けて、一気に二つ口の中へ放り込めば強烈な酸味が舌に直接響いて、噛み砕いていくと甘味が口の中へ広がった。いつもと変わらないその味にちょっと落ち着きを取り戻す。


「それ、美味しいの?」
「ウマイよ。食ったことねーの?」
「うん…酸っぱいのちょっと苦手で」


眉を下げてそう言う高宮に、食う?と差し出してみれば、躊躇いがちに一個手に取る。

思う程酸っぱくないから大丈夫だろうなんて思っていたけど、恐る恐る口へと運んだ瞬間、犬みたいにぶるっと震えた高宮を見て、思わず笑いが漏れてしまった。


「すっぱい…予想以上にすっぱい」
「ククッ、そんな震えるほど?」
「ね!自分でもびっくりした」


あははっ。そう口を開けて笑う高宮を、クラスメイトが何人かチラチラと見ているのが分かってイラッとする。

そう。結局のところ、俺も高宮の事が気になる半数のうちの一人にすぎないんだ。
ただ、1年の時から同じクラスで今も席が近いから他のヤツよりは話すし、その点では一歩リードしていると思う。

男子高校生・・・それも、男ばかりの学校生活ともなれば彼女を作って潤いが欲しいと思うのは誰だって同じで。この掴めない彼女をどう落とすか。俺だけじゃなく、高宮を狙ってる全ての男が探ってるだろう。

しかし、全く予想だにしないカタチで俺にそのチャンスがやってきた。


◇ ◇ ◇


「うわ、ヤベー。教室にサポーター置きっぱだ」


部活開始直前、サポーターを求めて鞄の中をくまなく探すもそれは見つからなかった。朝練の後、無造作に突っ込んだ覚えはあるから無いはずがない。

あぁ・・・そういえば教室で一回出したっけ。思い当たる事があって取りに行こうと教室まで戻ろうとするも、生憎もう部活が始まってしまう時間だ。


「青根、悪ィけど先輩達に言っておいてくれる?速攻で取りにいってくる」


頷いた青根に頼むな、と再度言い残して部室を後にした。
室内で部活動をしている生徒達以外は殆ど下校してしまったのか、教室棟に入るといつもの喧騒は無く、静寂が広がっていた。

そういえばこの時間に校舎に居るの初めてだな。
いつもは直ぐに部活に行ってしまうため、長く留まっていることは無い。
文化祭や体育祭の準備、委員会などがあれば話は別だが、何でもないただの平日のこの時間に自分がここに居る事が不思議な感じがした。

教室、施錠されてねーかな。移動教室や下校の度に最後に残った人が施錠をするという面倒臭いルールがある事にウンザリする。

何か起こる前に、の対策なんだろうけどこうして急いでいる時には煩わしいことこの上ない。もし施錠されていたら職員室を経由しなきゃいけないのでかなり時間が掛かってしまう。
想像だけで面倒になるが、一縷の望みをかけて教室のドアに手をかけると、意に反して簡単に開いた。


「お、ラッキー」


まだ誰か残ってたのか。
ヒョイッと教室内に視線を向けると、そこにあった姿にギクリとして入るのを躊躇ってしまった。

自分の席の、その隣。窓から入る微かな風に吹かれながら、高宮が机に顔を伏せて眠っていた。

あまりの不意打ちに自分の喉が鳴るのが分かる。雰囲気的に近づき辛いが、自分の席は高宮の隣にあるため必然的に近づかざるを得ない。

起こさないように足音を殺しながら進んで、サポーターの入っている袋を手に取った。ガサッと袋の鳴る音に高宮の方を見るも未だその瞳は閉じたまま。組んだ腕の上に頭を置いて眠るその姿はあまりにも無防備だ。こんな機会滅多にないし、少しくらい見ても大丈夫だろうか。

疚しい思いを抱えて足を一歩踏み出した時、何かが当たってふと足元に視線を落とした。
そこにあったのは手のひらサイズのノート。位置的にも高宮のものだとは思うが、何かの拍子で落ちてしまったのか。屈んでソレを手に取り、ページをめくると予想だにしなかったものが目に飛び込んできた。


「何だコレ」


思わず声が出てしまって、慌てて口を押さえるも視線はノートへ落としたまま。そこに連なる文字を目で追っていた。

自分の名前やクラスメイト、部活の先輩まで名前が書いてあり、意味が分からない事が書いてある。いや・・・意味が分からない訳ではなくて、何故こんな事が書いてあるのかが意味が分からない。


「あっ!」


呆然としていると、何時の間に目を覚ましたのか高宮が焦った様子で俺の手からノートを取り上げた。隠すようにそのノートを手中に収めてこちらを恐る恐る見上げる高宮。
その様子だと、やはりそのノートは彼女のもので間違いないだろう。


「・・・見た?」


その問いかけに一つ頷くと、打ちひしがれるように机へと突っ伏す高宮。
まぁ、あの内容ならそうなるのも分かるけど。


でも、これってチャンスなんじゃないか。

内容が内容だし、あれをネタにすればもっと近づけるかもしれない。そんな思いが頭の中に過ぎって、自然と口角が上がった。

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二口×腐女子少女が書きたいと思って始めたこの話。
珍しく始まり〜終わりまでのプロットをざっくり書いたのでサクサク進みました!
腐女子の皆さんに楽しんでいただけたら!


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