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天才とバカの境界線 01

天才とバカは紙一重だと聞いたことがある。

目の前で自分で自分をほめたたえている男を見ながらぼんやりとそんな事を思ってしまい、思わず眉間にしわが寄る。こいつはタダのバカであってほしい。

確かにバレーに関して才能はあると思う。
だが、コレで天才の域だったら心底ムカつくところだ。

木兎光太郎

全国で5本の指に入るエーススパイカーで、俺たち梟谷学園バレー部の部長だ。
これだけ聞いていたらすごい奴だと思いがちだがそうでもない。いや、ある意味すごいのだが。

なにがって…こいつの頭の中は小学生の低学年で止まってしまったのではないかと思うほどの単純バカ。この間もテストで全教科赤点を取るという大惨事を起こしたとこだ。スポーツ特待生で入れていなかったら高校へ行けていないだろう。

それなのにあまり深く気にする様子もない為、毎度顧問やマネ、赤葦に怒られているのだが…
その時はこれでもかってくらい落ち込むくせに、すぐに忘れたようにテンションを上げて来るのだ。
今もスパイク練習で超きれっきれのストレートを打ってはしゃいでいる。


「なあなあ赤葦!今の見た!?!俺、チョーかっこよくない!?!」
「え、あぁそうですね」
「ちょっと赤葦!もう少し感情込めて!!」
「・・・・・いえ、木兎さんがスゴイのはいつもの事なんで」
「…ふ、ふふ!へいへいへーい!やっぱ俺最強ーーー!!!!!!」


まぁいつも通りのやり取りなのだが。それで調子乗れる木兎がすごいのか乗らせる赤葦がすごいのか。とにかく、こんなバカはそうそう居ない。そう思っていた。
いや、そう思っていたかった。


「よっと!!私ってば天才的ー♪」


あの日、こんなセリフを聞くまでは。



その日は次の授業が体育だった為、部活仲間と中庭で昼を食べた後1人だけ早く教室に戻ろうとしていた時だった。


「あぁぁ!!!!ごめーーーん!!どーしよー!」


人気スポットなだけあり賑わう中庭に、ひと際大きな女子の声が響いた。かなり近くにいたので反射的に何事かとそちらに目をやると、バドミントンのラケットを抱えた子が校舎の2階を見て固まっていた。
どうやらシャトルが引っかかってしまったらしい。しかも厄介なことに、窓などが無い所の排水管と壁の隙間にはまってしまっている。あれは取れないわ。きっと俺以外のやつもそう思っただろう。

チラチラ見ていた野次馬も「あ〜あ」とでも言いたげな顔をした後、我関せずといった様子で視線を外している。俺も教室に戻るかと視線を外した時だった。


「あーもー!葵がいたらなー」


誰かがそう叫んだのだ。そして、なんともタイミングよく、3階の校舎の窓から1人の女子生徒が顔を出したのだ。


「呼んだー??」
「ちょっ!!葵ナイス!!!羽とって―――!」
「羽??…あぁあれか!OK〜」


あれを取れと頼んだ!?しかもOK?聞き間違いじゃなく軽く受けたぞ。

あまりに可笑しな会話に歩き出そうとしていた足を止め、思わず3階の女子生徒を見つめる。
上から棒か何かで突いて落とすのかとも思ったが、かなりの距離があるから箒とかでは不可能だろう。どうするものかと見つめていたら、あろうことか女子生徒が窓から身を乗り出したのだ。

そこからは唯々、開いた口と目が塞がらないという状態だった。
ほんの少しの凹凸を利用して器用に壁を伝い、排水管までたどり着いてからシャトルを取り、そのままスルスルと下りてきたのだ。そして先程の一言。


「よっと!!私ってば天才的ー♪」


何だこいつは。

シャトルを取ってと頼んだ女の子たちは、当たり前のように「さっすが〜」とハイタッチをしているがどう考えたって普通じゃない。一歩間違えば大怪我するような事だぞ。しかもスカートで。
そうなれば見てしまうのは男なので仕方がないわけで。


「・・・・水色」


行動が突拍子なさすぎて誰も突っ込まない様だったので、俺も触れないようにしようと思っていたのにどうやら口から漏れていたらしい。さほど大きくないはずだが、近いせいかしっかり聞こえてしまった様で女子たちが一斉にこちらを振り向く。


「やだーー!」
「ちょっと!!覗くなんて最低ーーー!」
「きもーい!!」


何とも辛辣な言葉だ。
関わるつもりなんてなかったが、酷い言われ様についつい言い返してしまった。


「おいおい、不可抗力だろう!スカートであんなとこから下りてくる方が悪い。つーか普通しねぇよ!」


しないじゃなく出来ないが正しいのだが。いや、出来ても普通しないか。
俺の言い分に「そうだけど…」と弱気になりながらもまだ嫌そうな目で見て来る女子たち。

なぜに俺が悪者にならなくちゃいけないのか。
そんな中、パンツを見られた本人はカラカラと笑いながら「まぁまぁ」と周りをなだめるのである。


「減るものじゃないし問題ないよ!新しいので良かったわ〜ボロっちくなくて」
「いや、そういう問題じゃないから!もう少し恥ずかしがって!!」


女子としてどうかと思う返答にすかさず友達からツッコミが入る。俺もそう思う。
それでも「ヨレヨレとかより良くない?」と意味の解らない説得をしている光景は異様だ。
なんだかここにいるのが既に場違いな気がして「気を付けろよ、女なんだから」と言い残してその場を去った。

これがやつ、高宮葵との初対面だ。

第一印象 水色のパンツの変人

そして

第二印象 スゴイバカ

次に会ったのは、衝撃的な初対面をした翌週だった。

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似非木葉ですみません。なんか思いついて書きたくなったらこうなっちゃった。
しかもこれは続きまくる予感です。


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