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嫌いは好きでオモシロい

好きは嫌いでムカつくの続編になります


「うわ、朝から暑すぎでしょ」


部屋に置いてある温度計が指し示す数字に思わず弱音が漏れる。
この液体の中をバレーボールが浮き沈みする真新しい温度計。これを見てから家を出るのが日課となったのはついこの前の事。
誕生日プレゼントとして、ぶっきら棒なお祝いの言葉と共に押し付けられるようにして手渡された時のことを思い出すと今でも顔がニヤケてくる。

彼女、高宮葵とはただのクラスメートでしかなかった。それなのにずっと俺へのあたりがキツイなとは思っていた。まぁ、万人から好かれるなんて無理だし、俺のことが嫌いなんだろうなって認識していが、その認識はどうやら間違いだった様だ。
プレゼントを渡す時に伏せられた顔は、よく見なくても分かる程に耳まで赤く染まっていた。逃げる様に背を向けた彼女の腕をつかんだ時、全身を固くして立ち止まる姿が面白いくらいに大げさで。わざと耳元でお礼を言えば、びくりと肩を震わせたりするし。

なんだ、コイツ俺のこと好きなんじゃん

今までの悪態もすべて照れ隠しからくるものなのだと思ったら、急に彼女に興味がわいた。




その日からは積極的に彼女に絡みに行っている。


「高宮おはよ〜」


そう言いながら通りすがりにグリグリと頭を撫でれば、今までの様に悪態が返ってくるのに顔がニヤケてしまう。
だってほら。俺が立ち去った後で真っ赤な顔を冷ます様に手で仰いだりしちゃうでしょ?こんな面白い反応されたらかまいたくなっちゃうよね。
友人に「相変わらずだ」と言われて、うなだれるように机に突っ伏す姿を俺が盗み見てるなんて、思ってもいないんだろうな。

こんなにも高宮の事を観察する事になるなんて、今までの関係だったら考えられなかっただろう。まぁ、嫌われてると思っていたのだから当たり前だけど。
岩ちゃんにも「最近お前、キモいぐらい機嫌良いよな」なんて言われるくらい、部活以外の時間も楽しくてしかたがない。
彼女の態度が照れ隠しからきていると、なんでもっと早くに気付かなかったのかと悔やまれるくらいだ。


「で、お前はなんで高宮にそんな執着してんだ?」
「へ?」


昼休み、いつもの様に高宮へちょっかいを掛けてから昼に向かう俺に、岩ちゃんが特に表情を変えることなく質問してきた内容が意外で、つい変な声が出てしまった。
岩ちゃんが俺の交友関係に口出してくることなんて、今まで無いに等しいのに。しかも女子の事を気にするなんてどうした。


「なに岩ちゃん、高宮が気になってたりするわけ?」


岩ちゃんからその手の話は聞いた事ないけど岩ちゃんだって男だ。恋愛の一つや二つはするだろう。そう理解はできるのに、何故だかモヤモヤと落ち着かない気持ちが沸き起こる。
あれかな。せっかく聞けた岩ちゃんの恋バナだけど、岩ちゃんに見込みがないから楽しくないのか??


「岩ちゃん残念でした〜。アイツが好きなのは及川さんだから」
「へぇ、そーかよ。良かったな両想いで」


さっさと付き合っちまえよという岩ちゃんの口からは、次の瞬間には昼飯の話題が飛び出していた。
え、ちょっと待ってよ。岩ちゃん、何言ってんの?両想い?誰が?昼飯はどうでもよくない??
ポカンと間抜けにも口を半開きにして凝視している俺に気付いた岩ちゃんが、不思議そうに「違うのか?」なんて問いかけてくるけど、不思議なのは俺の方だ。


「どうしてそうなったわけ?!」
「あ?お前が珍しくわかりやすいちょっかい掛けてっからだろうが」


誰にでもいい顔するお前が彼女でもないヤツをかまい続けるなんてなかっただろうと言われ、自分でも驚くぐらい納得してしまった。
本来なら好意を持たれているとわかれば、女子同士でめんどくさい事にならない様に一定の距離を取っているはずだ。それなのに高宮は、あんなにも分かりやすく照れたりするのに、それをめんどくさいと思わない。むしろ嬉しいと感じている。
それはつまり、そういう事で。さっき感じたモヤモヤもその為かと納得できる。


「どうしよう岩ちゃん!!俺、アイツが好きだわ!」
「だからそう言ってんだろうが」


それより早く行くぞと足を急がせる岩ちゃんは、すでに俺のことなどどうでもいいのだろう。
俺だって腹は減ってるけどさ!!もう少し興味持ってくれても良くない?!?
そう不貞腐れてみたが、岩ちゃんがかまってくれるわけもなく。「良かったなおめでとう」なんて心のこもっていないお祝いだけで終わられてしまった。

だけど気がついちゃったんだよね。
高宮は俺のことが好きだとか言っちゃってるけど、ちゃんとあいつから好きって言われたわけじゃないって事に。

あんなにも浮かれていたはずなのに、急に不安が押し寄せてくるのは本気で好きだと自覚したからだろうか。
飯の間も、最近は高宮のおかげで上がりっぱなしだったモチベーションが一気に下がったおかげでみんなに鬱陶しいと怒鳴られてしまった。

結果。みんなから「今から告白して来い」と言い渡され、部室を追い出される羽目になってしまった。
自分の気持ちも今知ったばかりなのに告白なんて。そもそも俺、自分から告白したことあったっけ?どう言えばいいのか考えたところでいい案なんて簡単には思いつかないんですけど。

とりあえず緊張からか喉が渇いてきたから何か飲もうと自販機に向かうと、見慣れた後姿が自販機の前で仁王立ちしているのを見つけ、心がソワりと揺れた。


「なーにしてんの?」
「うひゃ!?え、あ、え?及川!?」


今の今までなんて言おうかとか考えていたくせに、最近の条件反射なのだろう。なんの躊躇もなく背後から接近して声を掛けていた。もちろん、この後姿が高宮だと確証を持って。
予想通り、過剰なまでの反応をみせる高宮に沈んでいた気持ちがすぐに浮足立つ。


「べ、別にカフェオレにしようかイチゴオレにしようか悩んでただけだし」
「ブハッ!それで仁王立ちって本気すぎでしょ」
「っ!!うるさいなー!及川には関係ないでしょ!!」


真っ赤な顔で焦りながら「もういい!」とその場を立ち去ろうとする高宮の腕をつかみ逃げるのを阻止する。顔を隠したいからかふり返ることなく離せという高宮に、自然とにやけてしまうが彼女にはバレずにすみそうだ。


「まぁちょっと待ってなよ」


腕を離しても逃げない事を確認してから自販機へ向かい、カフェオレとイチゴオレを購入する。音で俺が2つ買ったのが分かったのか、驚いた声を上げながら振り返った高宮にイチゴオレを押し付けた。


「お前そっちね」
「ちょ!勝手に決めないでよ!あとお金!払うし!」


素直に受け取らないだろうことわかっていたため、気にすることなく手元にあるカフェオレに口を付ける。しばらく抵抗していたが、無駄だと察したのか小さく「ありがとう」と言ってイチゴオレに口を付けた高宮が俯いているのは照れ隠しだろう。
そんな反応だけで嬉しそうに弾む自分の鼓動が高宮が好きだと訴えてくるようだ。


「やっぱ甘いわ。コレもうお前が飲んでいいよ」
「は?え、ちょっといいよ!及川が飲みなよ!」


半分以上残っているカフェオレを強引に手渡せば、俺の意図がわかったのだろう。さすがに悪いからと財布を出そうとジュースを持ち直す高宮の顔を上げさせるため、人差し指でおでこを突いて上を向かせる。


「いーからいーから。俺が好きでやったんだから気にしなーい」
「あ、う、いや。でも、その・・・ありがとう、ございます」


嬉しいのか照れているのか困っているのかわからない顔のまま述べられたお礼は、かすかに声が震えていた。いつもの様に顔を伏せる事が出来ないからか、始終目が泳いでいるのも高宮らしくて、何とも言えないムズ痒さが全身を駆け抜ける。
自然と口元が緩むのを抑えられないとか、俺もそうとう高宮が好きじゃん。


「ちなみに、好きってのはお前に係ってるから」


さっきのカフェオレで脳まで甘くなってしまったのだろうか。なんて言ったらいいのかわからなかったくせに、サラリと口を突いた好きという言葉が彷徨っていた高宮の視線を止めた。
言葉にして改めて、好きが全身に染みわたっていく。


「好きだよ」


俺を見つめたまま固まっている高宮に、再度伝えた『好き』は先程よりも甘さが増してしまったようだ。口にすればするほど増す愛おしさは、つい先ほど自覚した恋とは思えない程に狂おしい。

ずっと信じられないと開かれたままだった目に、みるみる涙が溜まっていく。
俺に何か言おうとしては言葉を詰まらせて頷くから、溜まっていた涙が頬をつたい落ちていった。


「あーもう!そーゆーの可愛すぎるんですけど」


コロコロ変わる高宮の表情をもっと見ていようと思っていたのに。たまらず腕に抱え込んだ体は想像以上に熱くて、嬉しさで抱きしめる腕に力が籠る。

本当は聞かなくても高宮の気持ちは伝わっている。
かなりの確信を持っているくせに聞くのはズルいと思うけど。それでも高宮の言葉でちゃんと聞きたいから。


「あー好き。ほんと怖いくらい好き。ねぇ・・・高宮は?俺のこと、好き?」





あ、えっと。わかるひといらっしゃるかな?
以前の及川さんの誕生日にUPした『好きは嫌いでムカつく』の続編として書かせていただきました。一年以上空きましたけどね!!本当は今年の及川さんの誕生日に間に合わせようと思ったのですが全然だめでした!すみません。

もっとカッコイイ及川さんを書く予定だったんですけどねー。なんかちょっとヘタレ要素強めになってしまって申し訳ない。
でも一年前から書こう書こうと思っていたのがやっと書けてよかったです!the自己満足!
それでも一人でも読めて良かったと思って下さる人がいれば救われますww
願わくば、一人でも幸せな気持ちになれる人がいますよーに!
write by 朋
HappyBirthday Mitsu!



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