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忘れない、忘れたくない 00

冷たい冷たい北風が吹きつける中、どんよりとした空を見上げる。
少し前から明日は雪だと天気予報で散々注意を呼び掛けていただけあり、早くも今日中に降り出しそうな雲は青空を全て覆い隠していた。



「さみ〜〜」

そう言って隣で震える友人に「走ってみっか?」と投げかけたがすぐさま否定の言葉が返ってきた。言っておいてなんだが、俺も走る気などなかったからいいけどな。

午後からの講義が無い今日は、昼食後ずっと練習をするつもりだ。今から無駄に体力を使っても仕方がない。友人と珍しく大学のキャンパス外の店へと足を運んだのは、飯を食ったらバレーシューズを見に行こうと話していたから。
人よりすり減るのが早い事に文句を垂れるが、メンバーからは「お前が練習好きすぎるからだろ」と呆れられるだけだった。


練習は好きだ。
バレーが好きだから。

仲間とやるバレーは俺のすべてだ。

だが

ただ一人

アイツだけはスパイクを打ってレシーブをする。
それだけのやり取りでも毎日すっげー楽しいと思えた。




「おっ、受験生かな〜頑張ってるね〜」


友人の声につられて目線を追うと、塾へ制服を着た学生が沢山入っていくところだった。

そうか。もうすぐ受験シーズンだから半日授業でも受験生は午後から勉強か。
去年の今頃は、俺も制服を着ていて、周りの奴等が必死に勉強するものだから構ってもらえなかったな。

でも
だからこそ、アイツと出会えた



「木兎??行くぞ??」


ぼんやりと受験生を見つめていた俺に、お前は受験してねーだろと嫌みの様に突っ込む友人。
バレーで入学した俺は一般入試とやらは受けなかったと話したからだろう。それでも簡単なテストがあると思っていなかった俺は直前に焦ったけどな。

そうか、あれからもう一年も経ったのか

ついこの間の事のように思うのに、記憶の中のお前は、たしかに季節が廻っていることを示してくる。


お前は今どうしているんだ

お前にはどうしたら会えるんだ


何度も何度も願ったのに、叶うことがなかった一年。
思い出される記憶は鮮明で、お前が今、目の前にいない事が未だに信じられないんだ。



「・・さみぃ」


吹き付ける風の冷たさが俺を現実へと引き戻す。



なぁ、葵

バレーで忙しいからたまにしかいけないけど

俺はいまでもあそこに通ってるぞ


お前と会う為に

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プロローグ

木兎さんで切ない夢始めます!!
ちゃんとおバカじゃなく、切なくする予定。

次からが本編、2人に何があったのかをお楽しみください。


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