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あの日の君が 08

「めでたい事は良い。だからってちーっと気ぃ抜きすぎなんじゃネ?」


返って来た答案用紙を前に、呆れた顔で見降ろしてくる黒尾に何も否定する事ができない。長年の片思いが晴れて両想いになったからって浮かれ過ぎていたのは事実。
見事にほぼ全教科今までの最低点をたたき出した俺はひたすら謝るしかない。


「まぁ、赤点じゃなかっただけマシだけどネ。春高目指すってだけで目付けられてんだから気を付けろよ」
「マジでごめん」


別にテスト期間中に高宮とデートしまくってたとかいう訳ではない。
ただただ俺が集中できなかったってだけなのだ。その証拠にとでもいうか、高宮は全教科80点以上を取っている。
もともと真面目に授業を受けているタイプだし、努力だって惜しまない子だから納得の点数なのだが。


「・・・なんかごめんね。一緒に勉強とかすればよかったかな?」
「お前は悪くないデショ、ね、夜久くん?」


俺より先に高宮の言葉を否定してくれた黒尾に、「黒尾の言う通りです」と返すしかできなくて。あまつさえ、次のテストで挽回できなかったらデート禁止ねとか言われるし。抗議しようにも「部長命令です。お前いないと困んだけど」と言われてしまえば言葉を詰まらせるしかない。俺の立場がどんどん悪くなっていく…


「しっかし高宮はよく勉強できたな。いつもよりイイんじゃね?」


お前文系苦手じゃなかったっけと何故か高宮の苦手科目を知っている黒尾に、つい眉がピクリと動いてしまう。
高宮の事になると心狭いな。顔に出さないようにチラリと高宮を見れば、なぜかふへっと照れ笑いを浮かべていた。


「今回は頑張ったからね。その・・・夜久君に幻滅されないようにと思って」


マジで嬉しいし可愛いけど、今の俺には中々ダメージです。


「高宮・・・俺の事幻滅しないでね」


あまりの不甲斐なさに机に項垂れる俺を必死にフォローする高宮の横で、心底楽しそうに笑う黒尾。

あーも―マジでコイツムカつくわ。次は絶対何も言わせないだけの点数取ってやると密かに心に誓った。




「おぉ!!コレが噂の彼女さんですか!!」


テスト結果の話も彼女が出来たことも暴露され、リエーフに散々見たいと騒がれたあげく見せなきゃ教室まで押し掛けると脅されたので仕方なく高宮を部活に連れてった結果、第一声がコレ呼ばわり。
つい高宮が居る前でいつものようにリエーフに回し蹴りをくらわす俺に、ビクリと肩を上げる高宮。


「うちのリベロはいつもあんなんだぞー」


いつも蹴られるような事言うアイツが悪いから気にすんなとフォローになっているのかわからない解説をする黒尾に間違っちゃいないなと苦笑いを浮かべた。


「コイツらが絡んできて困ったらすぐ俺を呼べよ」


人見知りもなく、かつ遠慮もない一年共が気が気じゃないが部活中にずっと見ていられるわけじゃない。心配し過ぎだと黒尾に呆れられたがこいつらは信用ならないから仕方がない。
研磨や山本くらい人見知りだったら何にも心配することないんだけど…

とりあえずここは危ないからベンチより後ろに居てもらい、飛んでくるボールに気を付けてと言い残し練習を始めた。
始めは高宮の視線にちょっと力みすぎてしまって監督にチクリと釘刺されたが、練習後半の試合形式ともなれば通常通りの集中ができるようになっていた。むしろ最近のモヤモヤがなくなっているから頭がすっきりとしてボールがよく見えるくらいだ。

一試合目は無事に勝つことができ、メンバーを入れ替えての二試合目。


「夜久くん今日、絶好調だね」
「おぅ!次もバンバンとるから覚悟しとけよ」


チームが別れた研磨にニシシと笑顔を見せれば、何か考えた後チラリとベンチの奥を見るので俺もつられてそちらを見る。ベンチの奥と言えば高宮に案内した場所で、俺が見た瞬間に目が合いにこりとした笑顔で手を振ってくれた。


「彼女、ずっと夜久くんの事ばっかり見てるよね。愛されてるね」


高宮に手を振り返す傍らでぼそりと研磨がそんなことを呟くから、みるみる顔に熱が集中していくのが自分でもわかった。
確かにいつみても目が合ったかも

意識しだしたら再び緊張で力んでしまい2試合目は先程までの絶好調は見る影もなくしていた。


「研磨にまんまとやられたな」
「ホントわかりやすいなお前」


黒尾のみならず、海にまで笑われ「夜久さんの横抜けた〜」と喜ぶリエーフに八つ当たりのように蹴りをくらわして気持ちを落ち着かせる。
学習しねーなと呆れられているリエーフの横でいつものように傍観していたはずの監督が、「ふむ」と何か考える様な笑顔で俺を呼んだ。


「若い時に青春するのは結構だが、試合に支障が出るのは考え物だね」


笑顔の様で目の笑っていない監督に全身からだらだらと冷や汗が垂れる。まさか恋愛禁止とか言われないよなと警戒する俺を見抜いてか


「大会が終わるまで恋愛禁止…と言うつもりはないが、ちょっと慣れた方がいいね。たまに見に来てもらう様にしたらどうかね」


変な前置きを入れて俺の反応を楽しんだ後に出された提案に、俺よりも先にリエーフが「マネージャーって事っすか!」と反応したことにより、気付けば正式にではないもののマネ見習いの様なポジションを与えられていた。

盛り上がりながら片づけをする今でさえ、すでに当たり前のように手伝ってくれる高宮に無理しなくていいからと言ってみたがカッコイイ夜久君が見れて嬉しいからと言われ、止めるすべをなくした。
一緒に居られる時間が長くなるのは嬉しいが、危険要素が多すぎるメンバーに近づけさせる事にヤキモキしてしまう事は高宮には伏せて置こう。

好事魔多しと言ったところか。
そんな俺たちのやり取りを片付けが終わってもからかう様にはしゃぐメンバーに


「羨ましかったら自分たちも彼女作れよ。高宮は俺のだからな」


と言うだけ言って、お先にと高宮の手を引いて体育館を出た。
後ろの方でワーキャー騒いでる男の黄色い悲鳴など聞いていられない。

高宮には少し待っててもらい、奴らに追い付かれる前にと素早く着替えを済ませると、近づいてくる賑やかな声に気付き再び手を取って足早に学校を出た。

ホントダメだ、俺、高宮の事になるとすげー心狭い。カッコ悪すぎる。


「や・・夜久くん・はぁはぁ・・ちょと・・もう少し・・ゆっくり・・」


突然後ろから掛けられた肩で息をするような高宮の言葉に、はっと我に返る。
勢いで黙々と進んでいて、手を引いているくせに高宮を気にかけてやれなかった自分を殴りたい。


「ご、ごめんね・・・私普段・・運動してないから・・すぐ息・・切れるみたい」


立ち止まって一生懸命呼吸を整えようとする高宮はやっぱり笑顔で、その姿がさらに俺を凹ませた。


「ごめんっ!!あ〜〜も〜ダメなとこばっかり見せてるよな俺」


テストの結果も、練習中も今も。
カッコつけたいと思えば思うほどテンパるし、マジでカッコ悪い。


「そんなことないよ!」


呆れられたらどうしようかと心配している俺の気持ちを感じ取ったのか、力強く否定する高宮。


「夜久君はいつもカッコイイよ!練習も初めて見たけどカッコよすぎて目が離せなかったし、さっきの俺の発言も嬉しかったし」


それにカッコ悪い所なら私の方が見せてるよと照れ笑う高宮につられ、俺も照れくさくなり頬をかいた。


「いや、高宮はカッコ悪くなんてなかったし」
「夜久君もカッコ悪くなんてなかったよ」


なんて向かい合って照れながら否定しあう状態に可笑しくなり、2人して笑ってしまった。


「ふふ、こうやってお互い無理せず一緒に笑いあっていられるとイイな」
「そうだな、一緒に…がいいよな。よし!じゃあとりあえず今日は一緒に手つないで帰るか」


今度は引っ張るんじゃなくて、一緒に隣に並んで歩く。

俺たちの恋は始まったばかりなんだから焦ることは無い。

空回ったってテンパったっていいから一緒に笑っていようと言う高宮の笑顔に、俺はまた恋をした。



fin.

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お付き合いいただきまして、ありがとうございました!
何が書きたかったかよくわからなくなってしまったがww
でもこの焦らず一緒にって単語が出したかったのだけは確か!

とりあえず結ばれるお話はここまで。
無理やり終わらせたようなものなので番外編まで読んでいただけるとすっきりすると思いますww



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