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距離感にご注意を 中編

カチ・・・カチ・・・カチ・・・カチ・・・カチ・・・
規則的な機械音がやけに大きく聞こえ、外からはキャッキャとはしゃぐ子供の声と「帰るよ!」と叫ぶ母親の声が響いてくる。
日曜日迎えに行くからとの宣言通り、部活が終わってからそのまま車で迎えに来てくれた学くん。「悪い、シャワーだけ浴びさせて」と一旦家へ帰って、早々にシャワーを浴びてきてから私の隣に座ったのが10分ほど前。
音駒と学くんの家の間に私の家があるからこうなるだろうなとは思っていた。で、いったん間が出来ると喋りだせない学くんも想像していた。

電話の翌日、学校で孤爪に学くんの様子を詳しく聞けば、山本が孤爪に「お前のクラスの佐藤と高宮がキキキキキッキスしてたって本当か!?」とかなり興奮気味に大声で聞いたりしたものだから部内でしばらくその話になってしまったのだとか。
その話題が出てからコーチの顔が青ざめて、始終目が泳ぎまくっていたらしい。

他学年の人は私の存在を知らないし、まして直井コーチと結びつく事なんてないから気に留めていないだろうとの事。孤爪は前に私が話した彼氏の特徴と直井コーチが一致したし、噂にかなり動揺した様子からピンときたって。お兄ちゃんの話もしたことあったからかな。それにしても気付かれると思っていなかったので素直にスゴイと感心してしまう洞察力だ。

孤爪は「コーチがあんなに動揺してミスするとは思ってなかったけどね」と練習風景を思い出しては呆れたため息をついていた。それについては少し責任を感じなくもないので謝罪しておいたけど。
今のこの様子を見る限り、今週の練習は相当ダメだったんだろうなと予想ついてしまい、心の中で再度孤爪に謝った。

何度も何度も口を湿らすようにお茶を含んでいるが一向にしゃべる気配が感じられない学くん。学くんはそんなにも噂を信じてしまっているのだろうか。そう思ったらなんだか私がモヤモヤしてきてしまった。

そんなに信用ないのかな、私。他の男とキスなんてしそうだったかな。やたら瞬きの多い学くんをじっと見つめてみたが、目が合った瞬間にすぐにそらされてしまった。
あ、今のはちょっと・・・。


「ねぇ・・・私に何か言いたいことあるんじゃないの」


私がキレてどうするんだとも思うが、こんなにウジウジされたら仕方ないだろうと自分で言い訳する。急に不機嫌な声を出す私に分かりやすくビクリと反応した学くんは、ぎこちない動作で持っていたお茶置いた。


「な、何でだ?」
「噂・・聞いたんでしょ?」


本来なら問い詰められるのは噂がたっている私のはずなのに、学くんの方がバツが悪そうに動揺するのは何故だろうか。
目線を泳がせながら頭をかきむしる学くんがあまりにも不自然で可笑しくて。気が付けば先程芽生えたばかりの怒りは和らいだものの、代わりに悪戯心が顔を出した。
内心ニヤニヤしながら表情には出さず、四つん這いで胡坐をかいている学くんの前まで詰め寄る。若干のけぞる様にして体をそらす学くんに、かまわず近付きぐいっと顔を寄せた。


「たとえば・・・他の男とこんな風に密着していたんじゃないか・・とか」


右手で学くんの頬に触れ、親指の腹で頬をなでる様に滑らせれば、目を大きく開けて固まってしまった。
その反応は想定範囲内だったので、かまうことなく続ける。


「ねぇ、何してたか教えてあげようか」


そう言いながら学くんを跨ぐように膝立ちになり、両手で頬に触れ、ギリギリまで顔を近づける。唇が触れる手前で止め、瞬きを忘れている学くんの左目を思いっきり開く様に上下に引っ張った。


「どぅわぁぁあ!!?」
「プッっっ!」


想像以上の驚きを見せてくれた学くんは、私から逃れる様に後ろへ倒れた込んだ拍子に頭を打ったりするもんだから思わず吹き出してしまい慌てて口を押えた。それでも笑っているのはバレていると思うけどね。
しばらく大きな目で瞬きを繰り返した後、大きくため息をつきながら脱力して寝転がる学くん。


「お前なぁ‥」
「ふふふ、びっくりしたでしょ?」
「大人をからかうなよ」


寝転ぶ学くんの上に覆いかぶさるように近寄ってみるが、すっかり挙動不審が無くなっている学くんは動じることなく話を続ける。
それが何となく面白くなくて、学くんをもっと翻弄させたくなってしまう。どいたどいたと簡単に私を追いやる学くんに、負けじと両肩を抑えて起き上がるのを防ぐ。


「こら葵、いい加減に…っ!」


2人きりの部屋でこんなに密着しているしているのに何事もなく終わらせようとする発言を無理やりさえぎる様に唇を唇で塞ぐ。
会話中だったからか簡単に侵入できた舌で学くんの口内を犯していく。それでも鍛えている男の力に勝てるはずもなく、驚き終えた学くんによってすぐに引き離されてしまう。


「おまっ///ふざけるのも大概にしろよ//」
「ふざけてないよ〜本気だもん」


こうやって学くんが翻弄されてくれる時は安心できる。
こんな、ガキみたいな私でもちゃんと女として見てくれてるんだって。

普段から学くんは私が未成年だから学生だから友達の妹だからか、なかなか恋人らしい触れ合いをしてくれない。大事にされてるってのはわかるけど、やっぱり私じゃ物足りないんじゃないかって不安になる。
だからついついかまって欲しくてちょっかい出してるんだけどね。
それこそ子供っぽい発想過ぎて学くんには言えないけど。


「学くんだからキスするんだよ。学くんとしかしたいと思わないもん」


まだ顔が赤いままの学くんに満足してもう一度軽くチュッと唇に触れてから抱き付く。
たまには思いっきり甘えてもいいよね。
久しぶりの学くんの体温を感じて、さらに抱きしめている腕に力を入れた。すると、普段ならすぐに離れてしまう温もりが、今日は離れることなくギュッと抱きしめ返してくれる。
驚いて胸に摺り寄せていた顔を上げて学くんを見れば、先程までの照れたような顔ではなくなんだか真剣な表情をしていて。


「・・・煽ったお前が悪いんだからな」


そう言って私を抱きしめたままがばっと起き上がり、そのままベッドへダイブした。今まで下にいた学くんが私の上にいて、普段見ないような熱っぽい目で私を見下ろしている。


「普段俺がどれだけ我慢してると思ってんだよ」


そう言いながら私がさっきしたよりも、もっともっと激しく唇を貪られ、服と一緒に抱いていた不安すらもはぎ取られていった。


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*注* 次の話は性描写を含みますので、注意喚起としてパスワード入力になります



うそ・・・終わらなかった。
1話で終わらせるつもりで書き始めたのに…
しかもこの展開、次はがっつりですよね、そうですよねww
張り切っちゃおう( *´艸`)

write by 朋


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