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距離感にご注意を 前編


「痛っ!!」


この暑い炎天下の中の体育後。
散々汗をかいてぐったりとしながら教室へと戻る途中、隣でしゃべっていたクラスメイトの男子が急に片目を抑えて立ち止まる。


「やべ・・汗が目に入ったせいかコンタクトずれたっぽい」


マジで痛いと涙をこぼす佐藤に早くトイレ行けと急かすが、ここからトイレはかなり遠い。そこまで耐えられないから見てくれと懇願されたがめんどくさかったのでたまたま通りがかった孤爪に代わってと依頼したが


「ぇ・・・ちょっと無理・・」


チラチラと涙を流す佐藤を見たがおどおどとその場を去ってしまった。
孤爪、まだ佐藤に慣れてないのね。かなりの人見知りだから仕方ないと思いつつ、クラスメートにくらい慣れてもいいのにと小さくすぼめている背中を見送る。
本当は女の子より男が見た方が有らぬ誤解を生まなくてよいのだが…そうこうしている間にも他のクラスメートは通り過ぎてしまい、残されたのは私たちのみ。


「・・・しゃーない。ちょっと邪魔になるから端寄るよ」


人が来ないうちにパッと見て終わろうと思ったのに、見たところコンタクトが折れ曲がっているので外さないと無理っぽい。


「残念。取らなきゃダメだわ」
「マジか・・・ちょ、取って」


それは流石に自分でやれよと言ってみたが鏡が無いと無理と言われてしまう。
体操着じゃなければミニ鏡くらい携帯してるのに…。人の目に手を突っ込むなんて初めてでさすがにこれは慎重になる。それがいけなかったのか、取り終わったときに後ろの方で「うぉ」とか「キャ」って声が聞こえて振り返ると何とも赤い顔した同級生に目をそらされた。あぁ、コレ完全に誤解されたやつだわ。

「ちょっと」と呼び止めようと思ったが「何も見てないから」とあからさまな嘘を言って立ち去ってしまった。どうするよ。
一々追っかけるのもめんどいし、何より早くしないと着替える時間が無くなる。
幸い私の彼氏の耳にはいる事はない・・はずだし、放置でいいか。
なんかごめんと謝る佐藤に大丈夫なんじゃない?と返し、教室へと急いだ。




「ちょっ!!葵!!あんた廊下でキスしてたんだって?!」


そんな事を友達から問われたのは帰り際。
しかも大きな声で言ってくれるもんだからクラス中から好奇心の目を向けられた。


「してないし。なに?やっぱり噂にでもなってる?」
「2年の間では噂だよー!5組の高宮と佐藤が廊下で熱烈なのしてたって」


どんなキスだよ。
友人のセリフに教室中が騒ぎ出し、佐藤がからかわれている。


「おい止めろよ!高宮に迷惑だろ」


そんな佐藤の返しが余計に怪しいと騒ぎ出す教室で、当事者のくせに何事もなかったように身支度をし席を立った私に友人がコソリと「あれイイの?」と佐藤を指さす。
いいのと言われても佐藤と何もしてないし、救ってやったら余計に噂になりそうだし・・・何よりめんどくさい。


「いいんじゃない?噂なんてそのうち消えるでしょ。実際何もないんだし」


あれが好きな人とかだったら何とかしようと思うかもしれないけどね。
そう言う私に「哀れ佐藤…」とどこか遠い目をする友人を残し、周りの声を無視して教室を出た。

友人のあの目。佐藤はあんたのこと好きなのにって言いたいのがヒシヒシと伝わりましたけど、そんなに鈍い方ではないのでわかってますとも。だからあえて距離を保っていたのに。やっぱり近づきすぎたな、反省。
廊下で色んな人から注がれる視線の中に他学年も含まれており、今からではもう『どうかバレー部内で話題になりません様に』と願うしかなかった。




そんなこんなあったことを忘れかけていた夜。ご飯を食べ終わって部屋に戻るとスマホがメール受信を知らせていた。


「うわ珍しい、孤爪じゃん」


何かのタイミングで連絡先の交換はしたものの、2人とも用事が無ければメールしない主義なので孤爪からのメールなんて前にしたのがいつか思い出せないくらい久しぶりだ。
明日まで待てないほどの緊急かとすぐに開けた文面を見て冷や汗が出た。


【ちゃんと彼氏の誤解解いてよね。このままじゃコーチとしてどうかと思う】


なぜ孤爪は直井コーチと私が付き合ってると気付いたのか。以前に年上の彼氏がいるとは言ったことはあるが、名前も写真も見せたことなどない。
だいたい、学くんとはバレー部のコーチとは全く関係のない、兄の友達として知り合った私たちは学校での接点など何もなはずなのに。

学くんが自ら恋愛の話をするとは考えにくいし・・・。取りあえず孤爪に【よくわかったね。皆にもバレてる?】とメールを送った所で今度は着信でスマホが震える。

着信の相手は 直井学。平日に電話をかけて来るなんて珍しい…と思ったが、孤爪からのメール内容を思い出し納得した。


「は〜いもしもし?」
「・・・・あー遅くに悪い。大丈夫だったか?」


明るく電話に出た私とは違い、かなりテンションの低い声で尋ねる学くん。


「大丈夫だよ。電話珍しいね、どうかした?」


十中八九あの噂の事だろうと予想はつくが、もし違った場合に自ら地雷を投下する必要もないのであえてそのには触れず。そんな私の普段通りの返しに困惑したのかなぜかドモりながら「げ、元気か?」とか聞いてくる学くん。
ほんとこの大人…見掛けに依らず可愛いわ。だからいつも虐めたくなっちゃうんだけどね。


「学くんとデートできないから元気じゃな〜い」


こういえば絶対に学くんは戸惑うし、喜ぶのも知っている。
案の定、電話の向こうで「なっ!!おまっ!!」とか言葉にならない声を上げている。からかうなと声を上げる学くんにごめんごめんと謝り、半分冗談と返す。


「お前なぁ、俺で遊ぶなよな」
「ただのスキンシップだよ〜。それに半分は本当だしね」


最近バレーのコーチ業が忙しくて会っていなかったら寂しかったというのは本当。元気じゃないのは嘘だけど。寂しくて寂しくて泣いちゃうぞ〜と明るい声でからかえば、電話の向こうで声にならない奇声が聞こえる。
きっと思いっきり頭をかきむしっているんだろうな。

そんな学くんを想像して笑っている所にメールを受信したせいでスマホが震える。思わず「うゎ」と声を上げたせいでどうかしたかと聞かれたのでメール来ただけ〜と答えて通話のままメールを開く。

送り主は孤爪で【いや、多分みんな気付いてない】の文字だけ。
孤爪だけならまぁ問題ないでしょ。コーチと生徒って別に恋愛してもいいとは思うが万が一にも学くんの負担になったら嫌なので隠してるけど。


【内緒でよろしく。孤爪なら言わないと思うけど】


それだけ返信してふと電話の向こうで小さな声で学くんがブツブツ言っているのが聞こえる。電話中に相手がスマホ触るとタップ音とか聞こえるのかな?
学くんから聞こえる「誰だ…いや‥そんなわけない」などのセリフが当初の目的を思い出させた。

そういえば学くん噂信じてたんだっけ。孤爪とのメールまでも勘違いしてなのかなんだか焦っている学くん。からかい過ぎたかな?と思った時には遅かったのか


「あ〜も〜!!葵、日曜の午後暇か??デートするぞ!」


部活終わったら迎えに行くから待ってろと言うだけ言って電話は切れてしまった。


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相も変わらず1話で終われなかった…。
なぜ直井君だったのか自分でも不明ですが大人すきww
あ、大人をからかうの好きですww
でもまったく直井君が掴めていないので誰これ状態になっていてすみません。

write by 朋


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