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あの日の君が 04

アイツにフラれてもう1ヶ月経つんだ。

だんだんと初夏の日差しが強くなり、あの日の事が少し遠くに感じる。あの時はまだ長袖だった制服も今日から半袖へと衣替えが許され、多くの生徒が夏服へと変わった。


「なんか衣替えの日って新鮮だよな〜」


そうつぶやくのは私の前の席の椅子に後ろ向きで座っている夜久君。
最近は彼の定位置と化しているが、ココは夜久君の席ではない。日直が一周したからとゴールデンウィーク明けに早くも席替えが行われ、私の斜め前が黒尾君になってから夜久君はよくこの席に遊びに来るようになった。元々ココの席の子は他クラスに彼氏がいるらしく、休み時間の度にと言っていいほどクラスにいない。

前に黒尾君が怖いとも言っていたし。ちょっとわかるけど。

そんな黒尾君も今は「トイレ〜」とか言って席を立ったきり帰って来ない。
待ちぼうけをくらっている夜久君は、しゃべり相手としてたまたま後ろの席の私と話したってなんにもおかしくない。そうは思うけど、こうやって普通にしゃべってくれる夜久君の優しさが嬉しかった。


「白が増えると明るくなるよね、教室」
「毎年見てるはずなんだけどな」


毎回新鮮に見えるの不思議だよなと笑う夜久君がなんだか可愛くてつられて私も笑顔になる。
夜久君と話していると無理じゃない笑顔でいられることが多いなと気付いたのはついこの間。

友達から「失恋したのにキレイになった??なんか笑顔が可愛いんだけど」と言われて否定したものの、何となく理由を考えたら夜久君に行きついてしまったのだ。

こうやって改めてみると夜久君は可愛い顔してる。でもバレー部なだけあって筋肉も付いてるし、明るいし、優しいし、面倒見もいいし、友達も多い。女子の間でも秘かに人気があるんだと誰かが言っていた。そんな彼が私の事を好きだと言ってくれるなんて…


「え・・なに高宮?俺なんかついてる?」


思い当たる節が無さ過ぎてつい凝視してしまい、気付けば夜久君が不安そうに自分のあちらこちらを触っていた。


「あっ!ごめん!いや、何にもついてない!いや筋肉ついてるけど!」
「え?筋肉?」


いくら慌てたからって意味わからない事言い過ぎた!
冬服と違って二の腕から下がみえて、今までより男らしいなとか思ってたからって筋肉ついてる発言は変すぎる。


「まぁ、男だしな。高宮よりはあるぞ」


そう言って力こぶを作る夜久君の腕が思っていた以上にすごくて、驚きながらペタペタ触ってみる。


「わぁ!かたーい!全然違う!」


自分の二の腕と順番に触り比べて、その硬さがさらに際立つ。


「だめだ、私筋肉なさすぎる」
「・・・どれ?うわ、マジでやわらけー!」


それ力入れてんのと逆に感心されてしまうがこれでも全力です。
普段から筋トレしてる人たちばかりのバレー部ではありえないだろうけど。そういえば男子バレー部はマネージャーもいないんだっけ。


「俺より硬い人なんていくらでもいるけど、高宮くらい柔らかいのはあんまいないんじゃない?」
「ひどいっ!女の子は柔らかいんですー!」


運動部の女の子はもう少し固いと思うけど、一般女子なら柔らかいはず!
二の腕揉み合うなんて事したことないけど。そう思って、ふとこの状況のおかしさに気付いた瞬間、頭の上から声を掛けられた。


「・・・お前らナニやってんの」


見上げれば黒尾君が帰って来たとこで、口角を上げて危機感を感じさせる顔をしている。


「夜久やらし〜」
「なっ!なんでだよ!」


ニヤニヤと夜久君をからかう黒尾君はホント悪い笑顔で爆弾を投下した。


「だ〜って、女の二の腕って胸の柔らかさと一緒って言うじゃんネ」


この爆弾の攻撃力はかなり高めですよ黒尾君。

お互い触っていた腕から物凄い勢いで手を放すが、知っててやったんデショと煽る黒尾君に顔があげれなくなる。
絶対いま顔赤い。

夜久君がそんなわけあるか!と黒尾君に抗議しているのは聞こえるがまともに見る事が出来ないまま、都合よくなったチャイムに助けられこの話に終わりがきた。それでも顔をあげたら黒尾君の大きな背中が視界に入るせいで、すぐに先程のやり取りが思い出されてしまい顔を上げることができない。

黒尾君のバカ。
そっと自分で二の腕を触ってみる。やっぱり先程触った夜久君の二の腕とは全然違うぷにぷにの二の腕。やっぱり夜久君は胸板も固いのかな
そう思ってしまった自分に恥ずかしくなり、机に突っ伏す様に顔を隠した。


この気恥ずかしさは授業が終わっても収まらず、結局まともに夜久君の顔が見れないまま一日が終わった。避けているつもりでもなかったが、かなりの挙動不審だった私は結果的に夜久君を避けるみたいになってしまった。
そんな自分に反省している間にもクラスメートは次々帰っていく。

いつまでも机と仲良ししてても仕方がないし私も帰ろうと、タラタラと準備をしていたら荷物を詰め終える頃には教室に誰もいなくなっていた。日直でもないのに最後に出るの初めてかも
誰もいない教室が新鮮で、心なしか浮足立ったまま教室のドアを開けようと手を掛けた瞬間、勢いよく自動的に扉が開いた。


「どぅわあああ!」
「っ!!」


私よりもかなり驚いた様子の相手の叫び声につられ、思いっきり体が硬直する。


「うわ!!高宮!?ごめん、大丈夫!?ぶつかってない!?」
「あ・・・や、夜久君??こっちこそごめん!大丈夫!どうかした?」


突然の夜久君の登場に、止まりそうだった思考回路を何とか働かせて返事をしてみるもやっぱり恥ずかしさから入口を譲ると同時にそっと視線を外す。そんな私を夜久君がどう思ったのかはわからないが、特に何も言われることなく目の前を通り過ぎていく。


「タオルと飲み物忘れてさ・・・」


そう言いながら席へ行って手に取ったのは、私がタオルを返すときにあげた紙袋。


「これサンキューな!めっちゃ助かってる」


プレゼントした大きめのタンブラー片手に笑う夜久君は本当に屈託のない笑顔で、今日一日の自分の態度への罪悪感が増していく。
夜久君の胸が〜とか邪な事考えた自分も、そのせいで避けるみたいになった自分も、何もかもが恥ずかしい。


「そっか、よかった。あ、じゃあ私帰るね」


まっすぐな夜久君の目に耐えられず、何とか笑顔を作り逃げるように教室を出ようと夜久君に背を向ける。
こんな行動しかとれない私は夜久君には合わないよ。


「高宮!!」


いっそ走って立ち去ろうかと踏みだした足は、夜久君の声によってピタリと止まり動かなくなる。
それでも振り返る事が出来ずにいる私の背中に、たっぷりの沈黙の後、夜久君のはっきりとした声が届いた。


「あのさ・・・待つって言ったしごめんって言われたけど…でも俺の気持ちが本気だってことは覚えておいて」


「俺はこれからも高宮が好きだから」


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押せ押せ夜久君っ!!
管理人、夢主じゃなく夜久君応援中ですww
自分で書いてますけどね!!

次は夜久君視点〜


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